腎機能だけでは決まらない運動の目安|腎臓を守るための安全な強度を医師が解説

腎機能とリスクで考える運動の決め方 腎臓×運動

「eGFR別では決まらない」運動の考え方|腎臓を守るために「どこまでやっていいか」医師が解説

「運動が大事なのはわかっているけど、自分はどれくらいやっていいのか分からない」

外来でも非常に多い質問です。

特に、腎機能低下や尿蛋白を指摘された方では、

  • 運動して腎臓が悪くならないか
  • どこまで負荷を上げていいのか

といった不安を抱えることが少なくありません。

そもそもeGFRや尿蛋白って何? という方は▶︎ 腎臓病の基礎知識 で解説しています。


ガイドラインは「eGFR別の運動量」を示していない

結論から言うと、

eGFRごとの具体的な運動強度は明確に規定されていません。

近年のガイドラインでは、

  • 年齢
  • 心血管リスク
  • フレイル
  • 合併症

を踏まえた個別化が重視されています。

つまり、

「eGFRだけで運動量を決める発想自体が不十分」です。


まず確認すべきは「eGFR」より現在の状態

運動量を決める前に、まず確認したいのは「現在、安全に運動を始められる状態か」です。

CKDでは心血管疾患などを合併していることも多いため、eGFRの数字だけではなく、症状、持病、普段の活動量、体力などを合わせて考える必要があります。

状態 考え方
胸痛、安静時や軽い運動での強い息切れ、失神・強いめまいなどがある 運動を開始・継続せず、症状に応じて医療機関を受診する
発熱、感染症、急な体調悪化などがある 運動は休み、まず回復を優先する
運動中に新たな症状や強い痛みが出た 運動を中止し、症状が強い・続く場合は医療機関へ

これは簡略化した考え方です。運動を中止すべき症状や、運動開始前に確認したいポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

▶︎ 運動を中止すべきサイン

症状がなく運動できそうな場合に、どの程度から始めるかは、次に持病・体力・現在の運動習慣を確認して考えます。

eGFRではなく「症状・合併症・体力・運動習慣」から運動を考える

ここまでを、実際に運動を始める場面に置き換えてみます。

「eGFRが○○だから、この強度まで」という明確な境界があるわけではありません。

同じeGFRでも、年齢、心血管疾患、糖尿病、フレイル、普段の活動量などによって、無理なく行える運動は異なります。

腎臓病がある人が症状、持病、体力、運動習慣から運動の始め方を考える5ステップ

この図で重要なのは、CKDだから全員が同じところから始めるわけではないということです。

胸痛や強い息切れ、めまいなどの症状や急な体調悪化があるときは、まず運動を休み、症状に応じて医療機関を受診します。

心血管疾患などの持病がある、腎機能が大きく低下している、運動してよいか不安があるといった場合には、主治医に相談したうえで、可能であれば低い強度・短い時間から始めることを検討します。

一方、状態が安定しているものの、運動習慣がない方や体力に自信がない方では、低強度の有酸素運動や軽い筋力トレーニングから始め、徐々に増やしていく方法が現実的です。

すでに運動習慣があり、状態も安定している方は、CKDという理由だけで一律に低強度へ落とすのではなく、現在行っている運動を基準として考えます。

そのうえで、状態が安定しているCKD患者では、中強度の身体活動を週150分程度行うことが一つの目標になります。

150分は「最初から達成しなければならない量」ではありません。現在の体力や運動習慣を出発点として、身体の反応をみながら時間・頻度・強度を徐々に増やしていきます。

運動強度を自分で確認する方法の一つが、運動中の「きつさ」で判断する方法です。

  • 低強度:楽に感じる運動
  • 中強度:少し息が弾むが、無理なく続けられる程度
  • より高い強度:体力や持病、運動経験などを考慮して判断する

重要なのは、この強度をeGFRだけで振り分けないことです。

実際にどの程度の「きつさ」を目安にすればよいかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

▶︎ 手軽にできる運動の負荷の考え方

重要なポイント:運動リスクは「腎機能だけ」で決まらない

運動を考える際に見落としたくないのが、腎機能以外のリスクです。

CKDでは心血管疾患のリスクが高く、高血圧、糖尿病、肥満などを併せ持つ方も少なくありません。

  • 心血管疾患の有無
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満
  • フレイルや体力低下
  • 関節・筋肉など運動を妨げる問題

こうした要素によって、同じeGFRでも適切な運動の始め方は変わります。

「eGFRが低いから運動できない」「eGFRが高いから強い運動をしてよい」と単純には判断できません。

症状がある場合や、持病のためどこまで運動してよいか判断できない場合は、運動内容や強度を医療者に相談してください。

運動のやりすぎに注意すべき理由

運動は基本的に有益ですが、

やりすぎは逆効果になることがあります。

リスク 内容
横紋筋融解症 筋肉の破壊→腎障害
脱水 腎血流低下
ALPE(運動後急性腎障害) 短距離走などの強い無酸素性運動には注意が必要

適度な運動は身体にいいものの、上の表のように逆効果になる場合もあります。詳細は下記の記事で解説しています。  ▶︎ 運動で腎障害が起こるのはどんな時?


結局どれくらいやればいいのか

目標の目安としては、状態が安定しているCKD患者では中強度の身体活動を週150分程度です。

さらに、筋力や身体機能を維持するため、筋力トレーニングなどを組み合わせることも重要です。

ただし、これは全員が同じ運動メニューを行うという意味ではありません。

  • 運動習慣がない方:低強度・短時間から始める
  • 体力に自信がない方:軽い有酸素運動と軽い筋力トレーニングから始める
  • すでに運動している方:現在の運動を基準に、体調をみながら目標量を考える

150分は「スタート地点」ではなく、徐々に近づけていく目標です。

有酸素運動の種類によって効果に多少の違いはありますが、まずは無理なく継続できる方法を選ぶことが重要です。

まとめ

  • eGFRだけで運動の強度や量は決まらない
  • まず症状や現在の体調を確認する
  • 心血管疾患、合併症、体力、普段の運動習慣も考慮する
  • 状態が安定していれば、CKDでも運動は重要
  • 運動習慣や体力に応じた量から始め、徐々に目標へ近づける

運動の目的は、

マッチョになることではなく、長く自立して生活できる身体を維持することです。

腎臓と運動に関する記事のまとめは

▶︎腎臓に良い生活習慣のまとめ をご覧ください。

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、
個別の診断・治療の代替ではありません。
具体的な対応については、主治医にご相談ください。


参考文献

  • KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024.
  • Traise A, et al. The effect of exercise training on quality of life in people with chronic kidney disease requiring dialysis. A systematic review with meta-analysis. J Nephrol. 2025.
  • Ma Q, et al. The effect of regular aerobic exercise on renal function in patients with CKD: A systematic review and meta-analysis. Front Physiol. 2022.
  • Hallan SI, et al. Long-Term Physical Exercise for Preventing CKD in Older Adults: A Randomized Clinical Trial. JASN. 2025.
  • Johansen KL, et al. Exercise in Individuals with CKD. Am J Kidney Dis. 2012.

Dr.Crescentの人生実験室 | 著者情報 | プライバシーポリシー及び免責事項

コメント

タイトルとURLをコピーしました