「減塩が大事」と聞いたことはあっても、
実際にどれくらい減らせば意味があるのかは意外と分かりにくいものです。
結論から言うと、
高血圧がある人では1日6g未満が日本での基本的な目標です。
また、今より塩分摂取を減らすだけでも血圧低下が期待できます。
この記事では、
減塩でどれくらい血圧が下がるのか、1日何gを目指せばよいのか、
実際にどう減らせば続けやすいのか
を解説します。
減塩で期待できる効果
血圧低下
減塩は、血圧を下げるための代表的な生活習慣改善の一つです。
効果の大きさは、もともとの血圧や塩分摂取量、
どの程度減塩できたかによって異なります。
一方で、高血圧のある人を対象とした研究では、
収縮期血圧が平均で約7〜8mmHg低下した
という報告もあります。
すべての人で同じだけ下がるわけではありませんが、
「少し塩分を減らすだけでは意味がない」ということではありません。
血圧は長期間にわたって脳・心臓・腎臓へ影響するため、数mmHgの低下でも意味があります。
血圧130台をどう考えるか、
家庭血圧の測定方法や減塩以外の対策については、
以下の記事で解説しています。
▶︎ 血圧130台は本当に大丈夫?医師が解説する高血圧の新しい考え方
脳卒中や心筋梗塞などの予防
減塩の目的は、血圧計の数字を下げることだけではありません。
長期的な研究では、
食塩摂取量を約2〜3g/日減らした群で、
心血管疾患が約20%少なかった
という報告もあります。
この数字はすべての人にそのまま当てはまるものではありませんが、大切なのは、減塩による血圧低下を長期間積み重ねることです。
腎臓への負担を減らす
塩分摂取量が多いと血圧が上がりやすくなり、
CKDでは体液貯留や蛋白尿などにも影響することがあります。
そのため減塩は、
血圧管理だけでなく、腎臓を守る生活習慣の一つ
としても重要です。
腎臓の働きやCKDの基本については、以下の記事で解説しています。
▶︎ 慢性腎臓病(CKD)とは?原因・症状・予防について解説
1日何gまでが目標?
塩分摂取の目標は、
国やガイドラインによって多少異なります。
| ガイドライン | 塩分・ナトリウムの目標 |
|---|---|
| 日本 JSH2025 | 食塩6g/日未満 |
| 欧州 ESC2024 | 食塩5g/日未満を目安 |
| 米国 AHA/ACC 2025 | 食塩 5.8g/日以下(理想は3.8g/日以下) |
日本では、
まず6g/日未満を目標にすると実践しやすいでしょう。
いきなり厳密に6gへ到達できなくても、
現在より塩分摂取量を減らすこと自体に意味があります。
日本人は実際どれくらい塩分を摂っている?
日本人は、現在も目標量より多く塩分を摂取しています。
2023年の国民健康・栄養調査では、
食塩摂取量は平均で
男性10.7g/日、女性9.1g/日
でした。
つまり、高血圧がある人が6g未満を目指す場合、
現在より5g程度減らす必要がある人も少なくありません。

麺類の汁を残すなど、1回の工夫で塩分摂取を大きく減らせることがあります
自分がどれくらい塩分を摂っているか確認する方法
毎日の塩分摂取量を正確に把握するのは簡単ではありません。
まず実践しやすいのは、
食品表示の「食塩相当量」を確認することです。
特に確認したいのは、
- カップ麺・インスタント麺
- 惣菜や弁当
- ハム・ソーセージなどの加工食品
- 漬物
- 汁物
- 外食
などです。
1品ずつ細かく計算する必要はありません。
まずは、
「自分は何から塩分を多く摂っているのか」
を見つけるだけでも十分です。
医療機関では、必要に応じて尿中ナトリウムなどから
塩分摂取量を推定することもありますが、
日常の減塩ではまず
食品表示と普段の食事内容を見直す
ところから始めるとよいでしょう。
減塩が続かない理由
減塩を始めると、
- 味が薄く感じる
- 食事の満足感が下がる
と感じることがあります。
そのため、
単純に「塩を減らす」だけでは長続きしないことがあります。
一方で、
旨味、香り、酸味、香辛料、香ばしさ
などを利用すると、
塩分を減らしても満足感を保ちやすくなります。
味覚も徐々に薄味に慣れていくため、
まずは2週間程度、
できる方法から試してみるとよいでしょう。
減塩を続ける具体的な方法
まず「汁」を減らす
減塩で最初に取り組みやすいのが、
汁を全部飲まないことです。
- ラーメンやうどんの汁を残す
- 味噌汁を毎食つけない
- 煮物の煮汁を飲まない
といった工夫なら、
料理そのものの味を大きく変えずに塩分を減らせます。
旨味を活用する
昆布、きのこ、トマトなどに含まれる旨味を利用すると、
塩分を減らしても味の満足感を保ちやすくなります。
食品や条件によっては、旨味を活用することで30〜40%程度塩分を減らしても嗜好性を保てたという研究もあります。
「塩を減らした分だけ味がなくなる」
と考えず、
別の味覚や香りを足すことがポイントです。
香味野菜・スパイス・柑橘を使う
| カテゴリー | 例 |
|---|---|
| 旨味 | 昆布、トマト、きのこ |
| 香味野菜 | にんにく、生姜、大葉 |
| スパイス | 胡椒、唐辛子、山椒、クミン |
| 酸味・柑橘 | 酢、レモン、ゆず |
| 香り | ごま油 |
こうした食材を組み合わせると、
塩分を増やさず料理にメリハリをつけられます。
焼く・炒めるなど香ばしさを利用する
焼く、炒める、ローストするなど、
食材に香ばしさを加える調理法も有効です。
香りや食感が強くなることで、
調味料を減らしても満足しやすくなります。
野菜や果物を取り入れる
野菜や果物を多く含む食事は、
高血圧の予防・管理に有効です。
これらに多く含まれるカリウムは、
血圧管理に有利に働きます。
ただし、
血清カリウムが高い方や、医師からカリウム制限を指示されている方では、
摂取量の調整が必要です。
DASH食を参考にする
DASH食は、
野菜、果物、全粒穀物、低脂肪乳製品などを多く含む食事法で、
血圧を下げる効果が知られています。
DASH食を含め、
腎臓を守る食事の基本については以下の記事で解説しています。
医師である筆者がよく食べる減塩メニュー
筆者自身がよく食べている、
簡単な減塩メニューを紹介します。
- 無塩の鯖水煮缶
- 大葉
- 生姜
鯖をほぐし、
刻んだ大葉とすりおろした生姜を混ぜるだけです。
好みで少量のごま油を加えても構いません。
大葉や生姜の香りが加わるため、
醤油や塩を追加しなくても満足感を出しやすい
のが利点です。
火や包丁をほとんど使わず準備できるため、
減塩を日常生活に取り入れたい方にも試しやすい方法です。
「隠れ塩分」に注意する
減塩というと、
「料理に塩を振らない」
「醤油を控える」
ことを最初に考えがちです。
しかし実際には、
加工食品、汁物、麺類、惣菜、外食
などから多くの塩分を摂っていることがあります。
| 食品 | 食塩相当量の目安 |
|---|---|
| ラーメン | 約5〜7g |
| カップ麺 | 約4〜6g |
| 味噌汁 | 約1〜2g |
| 梅干し | 約1〜2g |
商品や量によって大きく異なるため、
実際には食品表示を確認してください。
腎機能低下がある場合の注意
健診で腎機能低下を指摘された方でも、
減塩自体は血圧管理やCKD管理で重要です。
一方、
「減塩するために野菜や果物を大量に食べる」
「カリウム入りの減塩塩を大量に使う」
といった方法には注意が必要な場合があります。
高度の腎機能低下、
血清カリウム高値、
RA系阻害薬やMRAなどを使用している場合には、
カリウム摂取量を個別に考える必要があります。
そのため腎機能に不安がある場合でも、
まずは
塩分そのものを減らす工夫
から始めるのが実践しやすいでしょう。
まとめ|まずは塩分の多い食品を一つ減らす
高血圧がある人では、食塩6g/日未満が日本での基本的な目標です。 ただし、最初から完璧に6g未満を目指す必要はありません。
まずは、 麺類の汁を残す、汁物を減らす、加工食品を選び直す など、塩分の多い食品を一つ減らすところから始めると続けやすいでしょう。
塩を減らした分は、 旨味、香味野菜、香辛料、酸味などを使うことで、 食事の満足感を保ちやすくなります。
減塩は一度だけ頑張るものではなく、 無理なく続けられる方法を習慣にすることが重要です。
タンパク質やコーヒーなど、 腎臓と食事についての情報は以下の記事でまとめています。
参考文献
- Japanese Society of Hypertension.
The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Elevated Blood Pressure and Hypertension 2025. - European Society of Cardiology.
2024 ESC Guidelines for the Management of Elevated Blood Pressure and Hypertension.
European Heart Journal. 2024;45:3912–4018. - American College of Cardiology / American Heart Association.
2025 Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults. - National Health and Nutrition Survey, Japan 2023.
- Enjoyment of Spicy Flavor Enhances Central Salty-Taste Perception and Reduces Salt Intake and Blood Pressure.
Hypertension. 2017;70:1291–1299. - The Impact of Herbs and Spices on Increasing the Appreciation and Intake of Low-Salt Legume-Based Meals.
Nutrients. 2019;11:2855. - The Role of L-Glutamate as an Umami Substance for the Reduction of Salt Consumption:
Lessons from Clinical Trials.
Nutrients. 2025;17:118.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、
個別の診断・治療の代替ではありません。
腎機能低下や高カリウム血症などがある場合は、
食事内容について主治医や管理栄養士へ相談してください。


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