【専門医が解説】CKD(慢性腎臓病)のタンパク質制限はいつから必要?何g?誤解だらけの食事療法を整理する

【腎臓専門医が解説】CKDのタンパク質制限はいつから必要?何g?誤解だらけの食事療法を整理する 腎臓×食事

「腎臓が悪いと言われたら、タンパク質を減らした方がいいのでしょうか?」
「肉や魚はどのくらい食べていいのでしょうか?」

CKD(慢性腎臓病)の食事療法というと、
「タンパク質を減らす」というイメージを持つ方も多いと思います。

しかし実際には、CKDだから全員が厳しいタンパク質制限をするわけではありません。
腎機能や尿蛋白、栄養状態などによって、必要な量は変わります。

先に結論

  • eGFR 45未満:0.6〜0.8g/kg/日が一つの目安
  • eGFR 45〜59:0.8〜1.0g/kg/日が目安
  • 腎機能が保たれていても尿蛋白がある:高タンパク食は避け、0.8〜1.0g/kg/日程度を一つの目安に考える
  • 腎臓病のリスクがある:1.3g/kg/日を超えるような高タンパク摂取は避ける
  • 腎臓病や明らかな腎リスクがない:筋トレをする人では1.2〜1.6g/kg/日程度が実用的な範囲

まずは、自分がどこに当てはまるかを次の図で確認してみてください。

腎機能、尿蛋白、腎臓病のリスクに応じたタンパク質摂取量の目安
※図は一般の方向けに簡略化した目安です。CKDの食事療法では原則として標準体重(BMI 22を基準とした体重)を用います。一方、筋量維持・増加に関する研究では実体重を用いることが多く、必要量は年齢・栄養状態・疾患などによって異なります。

図の根拠

CKDでの0.6〜0.8g/kg/日、0.8〜1.0g/kg/日、1.3g/kg/日は、
『CKD診療ガイド2024』やKDIGOのCKDガイドラインなどを参考にしています。

尿蛋白陽性での0.8〜1.0g/kg/日は、一律のガイドライン基準ではありません。
尿蛋白がある場合には積極的な高タンパク摂取を避けるという観点から、
一般の方向けの実用的な目安として示しています。

1.2〜1.6g/kg/日は、
腎臓病のない人がレジスタンストレーニングによって筋量の維持・増加を目指す場合の研究を参考にしています。

CKDではタンパク質をどれくらい摂ればいい?

まず、CKD診療ガイド2024で示されている
ステージ別の目安を確認してみましょう。

CKDステージ eGFR タンパク質摂取量の目安
G1〜G2 60以上 過剰摂取を避ける
1.3g/kg標準体重/日が上限の一つの目安
G3a 45〜59 0.8〜1.0g/kg標準体重/日
G3b 30〜44 0.6〜0.8g/kg標準体重/日
G4〜G5
(透析前)
30未満 0.6〜0.8g/kg標準体重/日

ポイントは、「CKDなら全員0.6〜0.8g/kgにする」というわけではないことです。

G1〜G2では、厳しいタンパク質制限ではなく、
まず過剰摂取を避けることが基本です。
一方、G3a以降になると具体的な摂取量が示されています。

なお、eGFRが正常でも尿蛋白が続いている場合には、
「腎機能が正常だから高タンパク食でも問題ない」とは考えません。
尿蛋白の程度や原因となる腎疾患などを踏まえて、タンパク質量を考える必要があります。

なぜタンパク質の摂りすぎが腎臓に負担になるの?

タンパク質を多く摂ると、
腎臓では一時的に腎血流量や糸球体濾過量が増えます。
これは糸球体過剰濾過と呼ばれる反応です。

過剰濾過による腎臓への悪影響の解説

健康な人では、この反応が直ちに腎障害につながるとは限りません。

しかし、すでにCKDや糸球体障害がある人では、
長期間にわたる過剰なタンパク質摂取が
腎臓への負担になる可能性があります。

また、タンパク質の代謝によって生じる尿素窒素などの老廃物は、
主に腎臓から排泄されます。
腎機能が低下すると、こうした物質も蓄積しやすくなります。

そのためCKDでは、
「たくさん摂るほど健康に良い」と考えず、
病期に応じて適量を考える
ことが重要です。

健康な人ならタンパク質は多くても大丈夫?

腎臓病のない健康な人が、
腎臓を守るためだけにタンパク質を制限する必要はありません。

特に筋力トレーニングをしている人では、
筋量の維持・増加のために通常より多めのタンパク質を摂ることがあります。

健康な成人を対象としたレジスタンストレーニング研究のメタ解析では、
タンパク質摂取量を増やすことで筋量増加への追加効果が認められる一方、
1.6g/kg/日前後を超えると、それ以上増やしても追加効果は明確ではありませんでした。

そのため、腎臓病や明らかな腎疾患リスクがなく、
筋トレをしながら筋量の維持・増加を目指すのであれば、
1.2〜1.6g/kg/日程度が実用的な範囲の一つと考えられます。

高血圧・糖尿病・肥満などがある場合は?

一方、高血圧、糖尿病、肥満、腎疾患の家族歴などがある人では、
将来的なCKDのリスクも考える必要があります。

こうした人が、筋肉を増やすためだけに
2g/kg/日などの高タンパク食を積極的に続ける必要性は高くありません。

CKD診療ガイド2024では、
G1〜G2のCKDについてタンパク質の過剰摂取を避け、
1.3g/kg/日を上限の一つの目安としています。

腎臓病のリスクがある人でも、
まずはこの程度を超える高タンパク摂取を避けておくのが実用的でしょう。

「肉100g=タンパク質100g」ではありません

ここは、実際に食事を考えるときによくある誤解です。

肉や魚100gに含まれるタンパク質は、
種類によって違いはありますが、
おおむね20〜25g程度です。

つまり、医師や管理栄養士から
「タンパク質を1日60g程度にしましょう」と言われても、
肉や魚を合計60gしか食べられないという意味ではありません。

ご飯、パン、麺類、卵、乳製品、大豆製品などにもタンパク質は含まれるため、
1日全体でどれくらい摂っているかを考えます。

タンパク質を減らすなら、エネルギー不足に注意

タンパク質制限で意外に重要なのが、
必要なエネルギーをきちんと摂ることです。

タンパク質だけでなく食事量そのものまで減ってしまうと、
体は筋肉などを分解してエネルギーを補おうとします。

その結果、体重減少や筋肉量低下につながり、
せっかく腎臓を守ろうとしているのに
低栄養を招いてしまうことがあります。

CKD診療ガイド2024では、
エネルギー摂取量は年齢や身体活動量などを考慮しながら、
25〜35kcal/kg標準体重/日を目安に調整します。

タンパク質だけでなく「塩分」も重要

CKDではタンパク質だけでなく、
減塩も重要です。

CKD診療ガイド2024では、
食塩6g/日未満が基本的な目安とされています。

減塩は血圧を下げるだけでなく、
尿蛋白を減らし、
RAS阻害薬などの腎保護治療をより有効にするうえでも重要です。

「タンパク質を何gにするか」だけに集中するよりも、
血圧管理や減塩まで含めて食事全体を整える方が重要です。

タンパク質は「何g」だけでなく、何から摂るかも大切

CKDの食事では、タンパク質の量だけでなく、
どのような食品から摂るかも大切です。

KDIGO 2024では、
動物性食品に偏らず植物性食品を多く取り入れ、
超加工食品を少なくする食事
が勧められています。

そのため、肉だけに偏るのではなく、
魚、大豆製品、豆類なども組み合わせながら、
野菜や全粒穀物などを含めて食事全体を整えることが基本です。

また、加工肉やスナック菓子、インスタント食品などの超加工食品は、
塩分やリン添加物などが多いこともあります。
「タンパク質を何gにするか」だけでなく、
食事全体の質を改善することも腎臓を守るうえで重要です。

タンパク質を減らしすぎない方がよい人もいる

特に注意したいのが、
フレイル、サルコペニア、低栄養がある人です。

高齢者や体重が減っている人でタンパク質を過度に制限すると、
さらに筋肉量が減り、
歩行能力や日常生活動作が低下する可能性があります。

そのため、

  • 最近体重が減ってきた
  • 食事量が少ない
  • 筋力が落ちてきた
  • 歩く速度が遅くなった
  • 高齢でフレイルが心配

といった場合には、
「腎臓が悪いから」と自己判断で食事量を減らさない方がよいでしょう。

CKDでは、
腎臓を守ることと、筋肉・栄養を守ることの両方を考える必要があります。

小児・成長期や急性腎障害では考え方が異なる

小児や成長期では、成長に必要な栄養を確保する必要があります。
また、急性腎障害(AKI)では病態や治療内容によって必要な栄養量が大きく変わります。

これらの場合は、
成人の安定したCKDに対するタンパク質量をそのまま当てはめることはできません。

自分のタンパク質量を簡単に計算してみる

たとえば、
標準体重60kgの人であれば、
1日あたりのタンパク質量は次のようになります。

設定 1日のタンパク質量
0.6g/kg 36g
0.8g/kg 48g
1.0g/kg 60g
1.3g/kg 78g
1.6g/kg 96g

こうして見ると、
0.8〜1.0g/kg/日は、思っているほど極端なタンパク質制限ではありません。

一方、プロテインや高タンパク食品を日常的に追加すると、
意識しないうちに1.5〜2.0g/kg/日近くまで増えることもあります。

まずは「タンパク質を減らす」より、
自分が今どれくらい摂っているのかを確認することから始めるとよいでしょう。

まとめ|「腎臓が悪い=タンパク質を減らす」ではない

CKDのタンパク質摂取について、
重要なポイントを整理します。

  • CKDだから全員が厳しいタンパク質制限をするわけではない
  • G3aでは0.8〜1.0g/kg標準体重/日が目安
  • G3b〜G5では0.6〜0.8g/kg標準体重/日が目安
  • G1〜G2では過剰摂取を避け、1.3g/kg/日が上限の一つの目安
  • eGFRが正常でも尿蛋白がある場合は、高タンパク食を積極的に行わない
  • 腎臓病がなく筋トレをする人では、1.2〜1.6g/kg/日程度が実用的な範囲
  • フレイルや低栄養がある場合は、タンパク質を減らしすぎないことも重要

大切なのは、
「タンパク質は少ないほどよい」「多いほどよい」のどちらでもありません。

自分のeGFR、尿蛋白、年齢、栄養状態などを確認し、
腎臓と筋肉の両方を守れる量を考えていきましょう。

タンパク質だけでなく、健診結果全体の見方を知りたい方へ

タンパク質をどれくらい摂ればよいかを考えるには、
まず自分のeGFRや尿蛋白が何を意味しているのかを知ることが大切です。

「この腎機能はどこまで心配すればよいのか」
「尿蛋白が出ていたら何をすればよいのか」
「次の健診まで放っておいてよいのか」

こうした疑問について、
健診結果の見方から次にやることまでを一冊にまとめました。

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参考文献

  1. 日本腎臓学会.
    『CKD診療ガイド2024』.
  2. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group.
    KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.
    Kidney International. 2024.
  3. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Glomerular Diseases Work Group.
    KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases.
    Kidney International. 2021.
  4. Morton RW, et al.
    A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults.
    Br J Sports Med. 2018;52:376-384.
  5. Tagawa R, et al.
    Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase:
    a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
    Nutr Rev. 2021.

医療上の注意:
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。
実際に必要なタンパク質量は、腎機能、尿蛋白、原疾患、年齢、栄養状態、治療内容などによって異なります。
すでにCKDで通院している方や食事療法を指示されている方は、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。

腎臓と食事についてさらに知りたい方はこちら

・腎臓×食事に関する記事のまとめは ➡️「【専門医監修】腎臓を守る食事ガイド|専門医が整理する基本と実践」

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