【専門医監修】腎臓を守る運動ガイド|安全な始め方から「貯筋」まで専門医が解説
「運動してください。」
健診や外来で、一度は言われたことがある方も多いと思います。
しかし、その次に続く
「何を」「どれくらい」「いつから始めればいいのか」
まで具体的に教わる機会は多くありません。
私は腎臓・透析専門医として外来診療を行っていますが、多くの患者さんが運動の必要性は理解していても、
「何から始めればよいか決められない」
という壁で止まっています。
このページでは、
安全に運動を始めるための考え方から、実際に今日できる最初の一歩まで
を順番に整理しています。
外来では「運動が必要」という説明や運動方法の情報はあります。
しかし、その間にある「自分は今日何をするか」を決める支援は十分とは言えません。
① まず確認:運動していい状態ですか?
運動は腎臓病のある方にも勧められます。
しかし、
どんな状態でも始めてよいわけではありません。
胸痛や強い息切れなど、まず医療機関で評価した方がよい状態があります。
一方で、多くの方は現在の体力に合わせた運動を始めることが可能です。
✔ まず知ってほしいこと
eGFRだけで
「運動してはいけない」
「この強度まで」
と決まるわけではありません。
年齢、心血管疾患、体力、運動習慣なども含めて考えることが重要です。
② 「運動してください」と言われた。でも、何をすればいいのか分からない方へ
外来で最も多い相談は、
「運動が大事なのは分かっています。でも何をしたらいいか分かりません。」
というものです。
これは意志が弱いからではありません。
「何を・いつ・どれくらい行うか」
という意思決定の負担が大きいためです。
その考え方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
まずはあなたの状況を教えてください
簡単なアンケートに回答すると、
運動を始めるための無料LINEプログラム
をご案内しています。
回答時間は約2分です。
LINEでは、
- 今日やること
- 3日後のフォロー
- 7日後の振り返り
までを一緒に進めます。
「知って終わり」ではなく、「始める」ことを目的にしています。
③ 結局どれくらいやればいい?
「週150分運動しましょう。」
ガイドラインでよく見かける数字ですが、
最初から150分を目指さなければならないという意味ではありません。
運動習慣がなかった方にとって重要なのは、
0分を5分にすること
です。
そこから少しずつ時間や回数を増やしていくことが、長く続けるための近道になります。
✔ 大切なのは「開始ライン」と「目標」を分けて考えること
- 開始ライン:今日できる量から始める
- 目標:中強度の運動を週150分程度
- 筋トレ:週2〜3回を目安に追加する
④ 歩くだけで十分?
ウォーキングは、
最も始めやすく、多くの方に勧められる運動です。
しかし、
年齢とともに低下しやすいのは筋力です。
健康寿命を延ばすためには、
有酸素運動に加えて筋力トレーニングも少しずつ取り入れることが重要になります。

現在の体力や運動習慣に合わせて始め、
無理なく少しずつ増やしていくことが基本です。
⑤ 「ちょうどいい運動」はどう判断する?
同じウォーキングでも、
人によって「楽」と感じる人もいれば、
「かなりきつい」と感じる人もいます。
そのため、
「何km歩くか」
ではなく
「どれくらいきつく感じるか」
で運動強度を考える方法が勧められています。
その代表的な指標が
RPE(自覚的運動強度)
です。
✔ 初心者の目安
少し息が弾むけれど、
会話は続けられる程度。
これが中強度運動の一つの目安になります。
⑥ 40代・50代から始めたい「貯筋」
年齢を重ねると、何もしなければ筋力や筋肉量は少しずつ低下します。
体重が大きく変わっていなくても、
筋肉が減り、脂肪が増えている
こともあります。
そこで大切になるのが、
将来の生活に必要な筋力を今から維持していく
「貯筋」
という考え方です。
貯筋の目的は、見た目のために大きな筋肉を作ることではありません。
- 立ち上がる
- 階段を上る
- 荷物を持つ
- 転倒を防ぐ
- 自分の足で移動する
といった、日常生活に必要な力を長く保つことです。

⑦ 筋トレは何から始める?
筋力トレーニングと聞くと、
重い器具を使う運動を想像するかもしれません。
しかし、運動習慣がない方が最初から複雑なメニューを行う必要はありません。
まずは、
椅子から立って座る動作
のように、日常生活につながる簡単な運動から始める方法があります。
✔ 最初から完璧なメニューは必要ありません
まず一つの運動を覚え、無理なく続けられることを確認してから、
回数や種目を少しずつ増やします。
筋トレは毎日行う必要はありません。
まずは週2回程度を目安にし、疲労や筋肉痛を確認しながら調整します。
⑧ 腎臓が気になる人が筋トレするときの疑問
腎機能低下や尿蛋白を指摘された方では、
筋トレによって検査値が悪化しないか不安になることがあります。
運動後には、クレアチニンや尿蛋白などの検査値が一時的に変化することがあります。
そのため、
検査前の運動状況を含めて数値を評価する
ことが重要です。
CKDがあるから筋トレを一律に避けるのではなく、
現在の腎機能、尿蛋白、栄養状態、体力、合併症を踏まえて考えます。
⑨ 強い運動ほど効果が高いとは限らない
運動は基本的に有益ですが、
短期間に急激に負荷を上げると、身体への負担が大きくなります。
特に、運動習慣がない状態から突然激しい運動を行うと、
脱水、筋肉の損傷、関節痛などにつながることがあります。
まれではありますが、強い運動をきっかけとして、
横紋筋融解症や運動後急性腎障害が起こることもあります。
⚠️ 運動中に中止したい症状
- 胸痛
- 強い息切れ
- 失神しそうなめまい
- 急な強い腰背部痛
- 濃い褐色尿
- 通常とは異なる強い筋肉痛や脱力
大切なのは、
強い運動を避け続けることではなく、現在の体力から段階的に増やすこと
です。
運動を始めるときの全体像
ここまでの内容をまとめると、運動は次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 症状や体調を確認する
- 現在の運動習慣と体力を確認する
- 今日できる量から始める
- 有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせる
- 体調を確認しながら、時間・頻度・強度を徐々に増やす
腎臓を守る他の重要テーマ
運動だけで腎臓病のリスクを管理できるわけではありません。
検査結果、食事、血圧、睡眠、喫煙、水分などを含めて、
現在の生活で優先度の高いものから見直します。



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