「水は1日2L飲んだ方がいい」
「腎臓が悪いなら水をたくさん飲んだ方がいい」
など、飲水量についてはいろいろな情報があります。
では、健康診断で腎機能の低下を指摘された人は、
実際に1日どのくらい水を飲めばよいのでしょうか。
結論から言うと、
すべての人に共通する「正解の○L」はありません。
ただし、何の目安もないと実際には困ります。
そこでこの記事では、
健診で腎機能の低下を指摘された方や、
保存期CKDで水分制限を受けていない方
を主な対象として、
日常生活で使いやすい飲水量の考え方を解説します。
結論:まずは1日1.5L前後を出発点にする
心不全や明らかなむくみ、著しい尿量低下などがなく、
水分制限を指示されていない人では、
飲み物として1日1.5L前後から考えると分かりやすいでしょう。
ここでいう1.5Lは、
食事に含まれる水分とは別の
「飲み物として摂る量」の実用的な目安です。
ご飯、味噌汁、野菜、果物など、
普段の食事からも水分を摂取しています。
そのため、体に必要な水分のすべてを飲み物だけで摂る必要はありません。
また、1.5Lぴったりである必要もありません。
その日の気温、活動量、発汗量、食事量などに応じて前後して構いません。
40kgの人と100kgの人で同じ量でいい?
当然ながら、体格が大きく違えば必要な水分量も同じとは限りません。
一方で、腎機能低下を指摘された人やCKD患者の飲水量について、
「体重×20mL」「体重×30mL」といった計算式を一律に使う
標準的な基準があるわけではありません。
そのため、体重だけから厳密に計算するのではなく、
1.5L前後を一つの出発点として、
小柄ならやや少なめ、大柄ならやや多めに考える
程度が実際的です。
例えば同じ60kgの人でも、
冬に一日中室内で過ごした日と、
真夏に屋外で長時間活動した日では必要な水分量は異なります。
暑い日や運動する日はどれくらい増やす?
水分の必要量が特に変わりやすいのが、
気温と発汗量です。
例えば、
- 暑い日に長時間外出した
- ウォーキングや運動をした
- 屋外で仕事をした
- 普段より汗を多くかいた
という日は、普段と同じ飲水量では不足することがあります。
いつもより汗をかいた日は、
まず300〜500mL程度多めにする
ところから考えると実用的です。
短時間の外出と、炎天下で何時間も作業した場合では、
失われる水分量は大きく異なります。
大量に汗をかいた場合にはさらに補給が必要になることもあり、
長時間の発汗では水だけでなく
ナトリウムなどの電解質補給も考える必要があります。
反対に、あまり汗をかかない日は少なくてもいい?
はい。
飲水量は毎日まったく同じである必要はありません。
例えば、
- 冬場
- 一日中室内で過ごした
- 活動量が少なかった
- 汗をほとんどかかなかった
といった日は、暑い日や運動した日より必要量が少なくなるのは自然です。
そのため、
「毎日必ず2L飲む」
「1.5Lに届いていないから寝る前にまとめて飲む」
といった調整をする必要はありません。
体重は飲水量を調整する重要な手がかり
数日程度の短期間では、
脂肪や筋肉が何kgも急に増減することは通常ありません。
そのため、短期間の体重変化には
体内の水分量の変化が大きく影響していることがあります。
ただし、体重変化を比較するには、
できるだけ同じ条件で測ることが重要です。
- 朝
- 排尿後
- 朝食前
- 同程度の服装
- 同じ体重計

このように条件をそろえて測ることで、
食事や衣服などによるばらつきを減らし、
数日単位の体重変化を水分状態の手がかりとして使いやすくなります。
体重が減った場合
例えば、
- 炎天下でたくさん汗をかいた
- 下痢や嘔吐があった
- 発熱していた
- 食事や飲水が十分に摂れなかった
という状況で短期間に体重が減っているなら、
水分が不足している可能性があります。
この場合は、普段より飲水量を増やす方向で考えるのが自然です。
体重が増えた場合
一方、
- 数日で体重が急に増えた
- 足や顔がむくむ
- 息切れがする
- 横になると苦しい
といった変化がある場合は、
体内に余分な水分がたまっている可能性があります。
この場合は単純に水分を追加するのではなく、
体液過剰や心不全などがないかを考える必要があります。
体重変化そのものの受診目安については、以下の記事で詳しく解説しています。
発熱・下痢・嘔吐がある日は普段の量では足りないことがある
水分量を増やす必要があるのは、暑い日だけではありません。
発熱、嘔吐、下痢などでは、
普段より多くの水分が体外へ失われます。
さらに体調不良時には食事量も減り、
食事から摂取していた水分まで減るため、
想像以上に水分不足になることがあります。
このような場合は、
「普段1.5Lだから今日も1.5L」と固定するのではなく、
失っている水分に応じて増やす必要があります。
心不全などで具体的な水分制限を受けている場合は、
自己判断で大量に増やさず、
体調不良時の対応について主治医や医療機関に相談してください。
「水を飲めば飲むほど腎臓に良い」は間違い
ここまで必要量に応じて水分を増やす話をしましたが、
脱水していない人が腎臓を守るために大量の水を追加して飲むこととは別の話です。
CKD患者を対象としたランダム化比較試験では、
飲水量を意図的に増やしても
腎機能低下を明確に抑える効果は示されませんでした。
必要な水分を補って脱水を避けることは重要ですが、
腎臓を守るために必要以上の水を飲む必要はありません。
この違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎
水を飲めば腎臓は良くなる?脱水と飲みすぎ、どちらも危険な理由
この飲水量の目安をそのまま使わない方がよい人
ここまで紹介した
「1.5L前後を出発点に、体格・季節・発汗量などで調整する」
という考え方は、
水分制限を必要としていない比較的状態の安定した人
を想定しています。
次のような場合には、この目安をそのまま使わないでください。
- 心不全がある
- むくみや体液過剰を指摘されている
- 尿量が著しく減っている
- ネフローゼ症候群や肝硬変などで体液管理を受けている
- 低ナトリウム血症など水分制限が必要な病態がある
- 透析を受けている
- 主治医から具体的な水分制限を指示されている
こうした場合は、
一般的な飲水量よりも
病気の状態に応じた個別の水分管理が優先されます。
どのような場合に水分制限が必要になるのかについては、
以下の記事で詳しく解説しています。
塩分が多いと水分管理も難しくなる
飲水量を考えるときに、
塩分も無視できません。
塩分を多く摂ると口渇が強くなり、
自然と飲水量も増えやすくなります。
特に高血圧や腎機能低下を指摘されている人では、
「水を減らす」ことだけを考えるより、
塩分を摂りすぎていないかを見直す方が重要な場合があります。
減塩の目標や具体的な方法については、以下の記事で解説しています。
▶︎
減塩すると血圧はどれくらい下がる?1日何gが目標か医師が解説
まとめ|「1.5L」を固定値ではなく出発点として使う
- 心不全・むくみ・著しい尿量低下がなく、水分制限の指示もなければ、
飲み物として1日1.5L前後を一つの出発点にする - 体格によって必要量は変わるため、
小柄ならやや少なめ、大柄ならやや多めに考える - 暑さ・運動・屋外作業などで汗をかく日は、
まず300〜500mL程度追加して調整する - 発熱・下痢・嘔吐などでも必要量は増えることがある
- 短期間の体重変化は水分量を調整する重要な手がかりになる
- 心不全・著しい尿量低下・透析などでは、
一般的な飲水量の目安をそのまま使わない
飲水量は、
「毎日絶対に○L」と固定するものではありません。
1.5L前後を一つの基準点として、
体格、季節、発汗量、体重変化、病気の状態に応じて上下させる
と考える方が実際的です。
そして重要なのは、
水を多く飲むことそのものではなく、
脱水にも体液過剰にもならない範囲を保つことです。
参考文献
- National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine.
Dietary Reference Intakes for Water, Potassium, Sodium, Chloride, and Sulfate. - European Food Safety Authority.Scientific Opinion on Dietary Reference Values for water.EFSA Journal. 2010.
- Clark WF, et al.Effect of Coaching to Increase Water Intake on Kidney Function Decline in Adults With Chronic Kidney Disease:The CKD WIT Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018;319(18):1870-1879. - Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO).
KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney Int. 2024. - 日本腎臓学会 編. CKD診療ガイド2024.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、
個別の診断・治療の代替ではありません。
主治医から具体的な飲水量を指示されている場合は、その指示を優先してください。


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