「腎臓が悪いなら、水をたくさん飲んだ方がいい」
と聞いたことはありませんか?
確かに、脱水になると腎臓への血流が低下し、
腎機能が一時的に悪化したり、急性腎障害(AKI)につながったりすることがあります。
しかし、だからといって
「水を多く飲めば飲むほど腎臓に良い」わけではありません。
先に結論
- 脱水は腎臓への血流を低下させ、急性腎障害の原因になることがあります
- 一方で、CKD患者が意識的に飲水量を増やしても、腎機能低下を明確に抑えられるとは示されていません
- 心不全や高度の腎機能低下などでは、水分が多すぎることも問題になります
- 大切なのは「多く飲むこと」ではなく、脱水にも体液過剰にもならないことです
この記事では、
「水を多く飲めば腎臓を守れる」という考え方がどこまで正しいのかを、
医学的な研究も含めて解説します。
慢性腎臓病(CKD)やeGFRについて基本から知りたい方は、
先にこちらをご覧ください。
▶︎
慢性腎臓病(CKD)とは?eGFR・尿蛋白について解説
結論:水分は「少なすぎても多すぎても」問題になる
腎臓は、体内の水分や電解質のバランスを調整する臓器です。
そのため、水分が極端に不足しても、
反対に排泄できる量を超えて体内にたまりすぎても、
腎臓や心臓に負担がかかることがあります。
| 状態 | 体で起こること | 腎臓との関係 |
|---|---|---|
| 脱水 | 循環血液量が減り、腎血流が低下する | 腎機能低下や急性腎障害につながることがある |
| 体液過剰 | むくみ、血圧上昇、心不全などにつながる | 心腎相互作用などを通じて腎機能悪化を伴うことがある |
つまり、
「水=多いほど腎臓に良い」という単純な関係ではありません。

水を多く飲めばCKDの進行を防げる?
「水をたくさん飲む人ほど腎機能が良い」という観察研究はあります。
しかし、観察研究だけでは、
水を多く飲んだから腎機能が良かったのか、
それとももともと健康状態の良い人が多く水を飲んでいたのか
を完全には区別できません。
そこで重要なのが、実際にCKD患者の飲水量を増やしたランダム化比較試験です。
したがって、現在のエビデンスからは、
CKD患者が腎機能を守る目的で意識的に大量の水を飲むことを推奨する根拠は十分ではありません。
これは「水を飲んではいけない」という意味ではありません。
必要な水分は摂りつつ、
腎臓のために普段より無理に増やす必要はない
ということです。
脱水:水分不足は腎臓に負担をかける
一方で、
水分不足を避けることは重要です。
脱水すると循環血液量が減り、
腎臓への血流が低下します。
その結果、クレアチニンが上昇したり、
状況によっては急性腎障害(AKI)を起こしたりすることがあります。
例えば、次のような状況では脱水に注意が必要です。
- 炎天下で長時間作業する
- 運動などで大量に発汗する
- 発熱が続く
- 嘔吐や下痢が続く
- 食欲が落ち、食事や飲水量が減る
- 高齢で自分から十分に水分を摂りにくい
特に農業、建設業、長時間の屋外作業など、
発汗量が多いのに自由に飲水しにくい環境では注意が必要です。
また、胃腸炎などで嘔吐・下痢が続いている場合には、
短期間でも強い脱水からAKIを起こすことがあります。
AKIを起こすと必ず腎臓にダメージが残る?
AKIを起こしても、その後に腎機能が回復する人は少なくありません。
ただし、AKIを経験した人では、
その後のCKD発症やCKD進行のリスクが高くなることが知られています。
そのため、
「脱水しても水を飲めば元に戻るから問題ない」
と考えるのではなく、
大きな脱水を繰り返さないことが重要です。

※この図は「一度脱水すると必ず腎機能が不可逆的に低下する」という意味ではなく、
AKIを繰り返すことが将来のCKDリスクにつながりうることを模式的に示しています。
飲みすぎ:水分が多すぎても問題になる
反対に、
「腎臓のため」と必要以上に水を飲むことにもメリットはありません。
健康な腎臓では余分な水分の多くを尿として排泄できますが、
心不全や高度の腎機能低下などでは、
水分を十分に排泄できないことがあります。
その結果、
- 体重が急に増える
- 足や顔がむくむ
- 血圧が上がる
- 息切れがする
- 横になると息苦しくなる
といった体液過剰の症状が現れることがあります。
ここで重要なのは、
「水を飲んだこと自体が腎臓を直接壊す」という話ではない
ことです。
心臓や腎臓の機能が低下している人では、
排泄できない水分が体内にたまり、
心不全やうっ血などを通じて病状悪化につながる可能性があります。
急な体重増加については、以下の記事で詳しく解説しています。
「水をたくさん飲む」と「脱水を避ける」は別の話
ここは混同されやすいポイントです。
脱水を避けること
= 必要な水分を補う
水を大量に飲むこと
= 必要量を超えて意図的に飲水量を増やす
この2つは同じではありません。
例えば、炎天下で大量に汗をかいた人が水分を補うのは、
失った水分を戻すために必要です。
一方、普段通り生活していて脱水もない人が、
「腎臓を守るため」に毎日さらに1〜2L追加して飲むことには、
CKD進行を防ぐという明確な根拠はありません。
したがって、
「水を多く飲む」のではなく「水分不足を避ける」
と考える方が適切です。
では、水はどれくらい飲めばいい?
実際の必要量は、
- 体格
- 食事から摂る水分
- 気温や湿度
- 運動や仕事による発汗量
- 腎機能
- 心機能
- 尿量
などによって変わります。
そのため、
「腎臓病なら必ず1日○L」という一律の数字では決まりません。
水分制限を指示されていない軽度CKDの方が、
日常生活でどの程度の飲水量から考えればよいかについては、
以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎
水はどれくらい飲めばいい?腎機能や季節によって変わる飲水量を解説
CKDなら水分制限した方がいい?
これも一律ではありません。
保存期CKDでも、尿量が保たれ、
むくみや心不全などの体液過剰がなければ、
CKDという理由だけで厳しい水分制限を行わないことも多くあります。
一方で、心不全、むくみ、尿量低下、維持透析などでは、
飲水量の調整が必要になることがあります。
どのような場合に水分制限を考えるのか、
また自己判断で避けたい水分管理については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ|「腎臓のために水をたくさん飲む」は必要ない
- 脱水は腎血流を低下させ、AKIの原因になることがある
- 一方、CKD患者が意図的に飲水量を増やしても、腎機能低下を明確に抑えるとは示されていない
- 心不全や高度の腎機能低下では、体液過剰にも注意する
- 「大量に飲む」のではなく「不足も過剰も避ける」ことが重要
腎臓を守るために必要なのは、
特定の量の水を無理に飲み続けることではありません。
自分の体格、季節、発汗量、腎機能、心機能などに応じて、
必要な水分を過不足なく摂ることが基本です。
水分だけでなく、血圧、減塩、運動、禁煙など、
腎臓を守る生活習慣全体については以下の記事でまとめています。
▶︎
腎臓に良い生活習慣とは
参考文献
- Clark WF, et al.Effect of Coaching to Increase Water Intake on Kidney Function Decline in Adults With Chronic Kidney Disease:The CKD WIT Randomized Clinical Trial.JAMA. 2018;319(18):1870-1879.
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO).
KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.Kidney Int. 2024. - 日本腎臓学会 編. CKD診療ガイド2024.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、
個別の診断・治療の代替ではありません。
具体的な飲水量について医師から指示を受けている場合は、その指示を優先してください。


コメント