eGFR60は本当に大丈夫?|専門医が教える「数値より大切なこと」
健診でこう説明されたことはありませんか?
実際、eGFR60前後は「ギリギリ正常」「年齢的に問題ない」と扱われることも少なくありません。
しかし、腎臓内科では“今の数値そのもの”よりも重要視していることがあります。
この記事の結論
- eGFRは「今の点数」ではなく「将来どう下がるか」が重要
- 特に尿蛋白と経年的な低下速度(eGFR slope)が重要
- 40歳未満でeGFR60未満なら一度専門医相談を推奨
- 40歳以上でも「低下傾向」「尿蛋白陽性」があれば要注意
そもそもeGFRとは?
eGFRは、血液中のクレアチニンという物質から計算される「推算の腎機能」です。
つまり、実測値ではなく推定値です。
そのため、
- 筋肉量
- 脱水
- 食事
- サプリメント(クレアチンなど)
の影響を受けます。
1回だけの採血で一喜一憂する必要はありません。
▶︎ クレアチンは腎機能を悪化させる?
▶︎ 筋肉量が多いとクレアチニンは上がる?
本当に重要なのは「eGFR slope」
腎臓内科で重視されるのは、今のeGFRそのものではなく、どの速度で低下しているかです。
これをeGFR slope(低下傾向)と呼びます。

年齢によって意味が変わる
同じeGFR60でも、年齢で意味は変わります。
| 年齢 | eGFR60の考え方 |
|---|---|
| 30歳 | 加齢だけでは説明しづらく、将来的な低下リスクも長期間に及ぶため注意。 専門医相談を推奨。 |
| 50〜60歳 | 生活習慣病や高血圧の影響を受け始める年代。 過去との比較や尿検査が重要。 |
| 70〜80歳 | 加齢変化の範囲のこともあるが、尿蛋白や急速低下があれば要注意。 |
理由は単純で、腎臓をあと何十年使う必要があるかが違うからです。
腎臓内科では一般的に、
- eGFR30未満 → 透析・移植について少しずつ説明開始
- eGFR15未満 → 腎代替療法(透析・移植)の具体的検討
を行います。
つまり重要なのは、
「何歳でそのラインに到達しそうか」
です。

上のように、今後の経過をどう考えるかが変わってきます。
また早期に治療介入することで赤線の傾きを青線の傾きのように和らげることも期待できます。
尿蛋白は「未来のアクセル」
eGFRだけでは不十分です。
特に重要なのが尿蛋白です。
尿蛋白が陽性の場合、将来的なeGFR低下速度が速くなることが知られています。
つまり、
とも言えます。
eGFR60と言われたらまず確認すること
- 過去の健診結果を並べる
- eGFRが毎年どれくらい下がっているか確認
- 尿蛋白・尿潜血を確認
- 血圧・糖尿病・喫煙歴も確認
特に重要なのは「単発の数字」ではなく時系列です。
逆に過去の手術や大きなイベントで悪くなったものの、その後は何年も腎機能が変わらず尿蛋白や潜血がない場合は経過観察となる場合が多いです。
こういう場合は腎臓内科を検討
| 状態 | 受診推奨度 |
|---|---|
| 40歳未満でeGFR60未満 | 高い |
| 尿蛋白陽性 | 高い |
| 年間5以上のeGFR低下 | 高い |
| 血圧・糖尿病・肥満あり | 検討 |
| 単発で軽度低下のみ | 経過確認 |
最近は「守れる時代」になってきた
以前は、
- 血圧管理
- 減塩
- 糖尿病管理
が中心で、薬剤としてもACEi/ARBという薬剤がメインとなっていました。
現在はそれに加えて、
- SGLT2阻害薬
- MR拮抗薬
- GLP-1受容体作動薬
など、様々な臨床試験で腎保護を期待できる薬剤も増えています。
つまり、
「悪くなってから考える」より、早い段階で低下速度を緩やかにすることが重要
という時代になっています。
まとめ
- eGFR60だけでは判断できない
- 重要なのは「尿蛋白」と「低下速度」
- 若いほど早期介入の価値が大きい
- 単発の数値より時系列を見る
「今どれくらい悪いか」ではなく、
5年後・10年後にどうなるかを考える。
それが腎臓内科の視点です。

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