足のむくみは病気?原因と受診の目安を腎臓専門医が解説

腎臓の基礎知識

夕方になると靴下の跡がくっきり残る。

朝は気にならなかった足が、夜になるとむくんでいる。

こうした経験は珍しくありません。

一方で、急に足がむくんだり、体重が増えたりすると、「腎臓や心臓が悪いのではないか」と心配になる方もいると思います。

しかし、むくみがあるからといって、必ずしも腎臓が悪いわけではありません。

足のむくみには、長時間の立ち仕事や静脈の働き、薬の影響、心臓や腎臓などの病気まで、さまざまな原因があります。

大切なのは、むくみだけで病名を判断することではなく、いつから、どこがむくんでいるか、体重や体調に変化があるかを合わせて確認することです。

この記事の結論

  • むくみとは、皮膚の下などに余分な水分がたまった状態です。
  • 静脈の働きや薬の影響でも起こり、腎臓病だけが原因ではありません。
  • 片脚か両脚か、急に出たか、ほかの症状があるかが重要です。
  • 急な片脚の腫れや、呼吸困難・胸痛を伴う場合は早急な評価が必要です。

むくみとは?体のどこに水分がたまる?

正常な状態とむくんだ状態

むくみは、医学的には浮腫(ふしゅ)と呼ばれます。

私たちの体には、血管の中、細胞の中、細胞と細胞の間など、さまざまな場所に水分があります。

むくみとは、このうち細胞と細胞の間に余分な水分がたまった状態です。

例えば、足の静脈から血液が戻りにくくなると、血管の中の圧力が高まり、周囲に水分がたまりやすくなります。

また、心臓や腎臓などの病気によって、体内の塩分や水分の調節がうまくいかず、むくみが生じる場合もあります。

つまり、むくみは水分がたまった状態ですが、その原因は一つではありません。

なお、むくみは脂肪が増えて足が太くなることとは異なります。ただし、両方が同時に起こることもあり、見た目や指で押したときの反応だけでは判断できません。

足がむくむ原因は?腎臓病だけではない

足のむくみには、さまざまな原因があります。長時間同じ姿勢で過ごすことや薬の影響で起こる場合もあれば、心臓・腎臓・肝臓などの病気が関係している場合もあります。

代表的な原因を、以下の表にまとめました。

主な原因 むくみが起こる仕組み 原因を考える手がかり
静脈の問題 足から心臓へ血液が戻りにくくなり、血管の外に水分がたまりやすくなる 長時間の立位や座位、夕方に悪化する傾向など
薬の影響 血管の働きや体内の水分・塩分の調節などが変化する 薬を飲み始めた後や、増量した後にむくみが現れた場合など
心臓・腎臓・肝臓などの病気 血液の流れや体内の水分・塩分の調節などに異常が生じる 息切れ、短期間の体重増加、尿検査・血液検査の異常など
リンパの問題 組織にたまった水分をリンパ管が十分に回収できなくなる 手術や放射線治療の既往、持続するむくみなど

長時間の立ち仕事や静脈の問題

足の静脈は、重力に逆らって血液を心臓へ戻しています。このとき、ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用や、静脈の中にある逆流防止の弁が重要な役割を果たしています。

長時間立ったまま、あるいは座ったままでいると、足に血液がたまりやすくなります。また、静脈の弁が十分に働かなくなる慢性静脈不全でも、足のむくみが起こります。

このようなむくみでは、夕方や長時間立った後に悪化し、足を上げて休むと軽くなることがあります。ただし、こうした経過だけで静脈の問題と断定できるわけではありません。

薬の影響

むくみは薬の副作用として起こることもあります。

例えば、一部の血圧を下げる薬や、痛み・神経痛の治療に使う薬などが原因になる場合があります。

新しい薬を飲み始めた後や、薬の量が増えた後にむくみが出現した場合は、処方医に相談しましょう。自己判断で薬を中止しないことが大切です。

心臓・腎臓・肝臓などの病気

心不全では、血液のうっ滞や体内の水分調節の変化によって、足などに水分がたまることがあります。特に、新たな息切れや、横になると息苦しくなるといった症状は重要な手がかりです。

腎臓の病気では、塩分や水分を十分に排泄できなくなる場合や、大量の尿蛋白によって血液中のアルブミンが低下する場合などに、むくみが生じます。

肝硬変などでも、血液の流れや水分調節の異常によって、むくみや腹水が起こることがあります。

ただし、体重増加や両足のむくみは複数の病気で共通して見られるため、むくみの見た目だけで心臓・腎臓・肝臓のどれが原因かを判断することはできません。

また、慢性腎臓病があってもむくみがない方は少なくありません。むくみの有無だけでは腎機能を判断できず、尿検査や血液検査なども重要です。

そのほか、甲状腺機能低下症や睡眠時無呼吸症候群でもむくみが生じることがあります。それぞれ寒がり・便秘・疲れやすさ、日中の眠気・いびきなどを伴う場合もあり、診療の参考になる場合があります。

リンパの問題

血管から周囲の組織に移動した水分の一部は、リンパ管を通って回収されます。この働きが低下すると、水分が組織にたまり、リンパ浮腫が起こることがあります。

例えば、がんの手術でリンパ節を切除した後や、放射線治療の後などに生じる場合があります。ただし、こうした治療歴がなくても起こることがあります。

むくみの見た目だけでリンパ浮腫と判断することはできません。

なお、むくみには複数の原因が重なっている場合もあります。原因を考える際には、足の状態だけでなく、いつからむくんでいるか、片足か両足か、ほかにどのような症状があるかを合わせて確認することが重要です。

むくみの原因を考える3つのポイント

むくみが気になったときは、次の3つを確認すると、原因を考える手がかりになります。

確認すること 注目するポイント
① 片脚か、両脚か 片脚だけ急に腫れた場合は、血栓や感染などの確認が重要です。両脚では静脈の問題、薬の影響、全身性の病気などを考えます。
② 急に出たか、以前からあるか 急に出現したむくみでは、早急な評価が必要な病気もあります。長く続く場合は静脈やリンパの問題なども考えます。
③ ほかの症状があるか 息切れ、胸痛、発熱、足の痛み、尿量の減少、体重増加などを確認します。

特に注意したいのが、片脚だけが急に腫れた場合です。

足の深い静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」のほか、感染症、けが、関節周囲の炎症などが原因になることもあります。

急な片脚の腫れがある場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関で評価を受けてください。

むくみと一緒に体重が増えたら?

むくみを考えるうえで、体重の変化は重要な手がかりになります。

脂肪や筋肉が短期間で何kgも増えることは通常ありませんが、体内の水分量は数日でも変化することがあります。

例えば、体内に水分が1L余分にたまれば、その分だけ体重は約1kg増えます。

ただし、実際の体重は食事量や排便、測定条件などでも変動します。また、足の一部だけがむくんでいる場合など、目立った体重増加を伴わないこともあります。

体重が増えたときに確認したいこと

  • 数日間で急に増えていないか
  • 同じ時間帯・条件で測定しているか
  • 足や顔のむくみが増えていないか
  • 息切れや尿量の変化がないか
  • 心臓病や腎臓病などの持病がないか

心不全などで治療中の方は、主治医から体重増加について個別の警戒基準を指示されている場合があります。

一方で、すべての人に共通する「何kg増えたら危険」という基準があるわけではありません。

急な体重増加・減少の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶︎ 体重が急に増えた・減ったときの受診目安

どんなむくみなら病院を受診する?

むくみがある場合、大切なのは緊急性の高い病気を見逃さないことです。

受診の目安を3段階に整理しました。

受診の目安 症状・状況
すぐに受診 強い息切れ、胸痛、失神などを伴う場合は救急対応が必要です。
片脚だけが急に腫れた場合も、血栓症などを考え、当日中の評価が望ましい場合があります。
早めに受診 むくみが急速に悪化する、短期間で体重が増える、新たな息切れや尿量の減少がある場合。
通常の外来で相談 むくみが繰り返す、長く続く、徐々に悪化する場合。

※強い呼吸困難や胸痛などがある場合は119番への連絡を考えてください。片脚の急な腫れでも、呼吸困難や胸痛を伴う場合は救急対応が必要です。上記は一般的な目安であり、症状や持病によって緊急性は異なります。

また、赤みや熱感、強い痛み、発熱を伴う場合には、感染症なども考える必要があります。症状が急に出現した場合や悪化している場合は、速やかに受診してください。

むくみが気になるとき、自宅でできること

まずは変化を記録する

むくみの原因を考える際には、いつから、どのように変化しているかという情報が役立ちます。

受診前に確認しておきたい5項目

  1. いつから:今日から、数日前から、数か月前から
  2. どこが:右脚、左脚、両脚、顔など
  3. いつ悪化するか:朝、夕方、立ち仕事の後など
  4. 体重・血圧:普段と比べて変化があるか
  5. 薬や症状:薬の変更、息切れ、痛み、尿量の変化など

体重を記録する場合は、朝の排尿後・朝食前など、できるだけ同じ条件で測定すると比較しやすくなります。

長時間同じ姿勢を避ける

長時間立ったまま、座ったままにならず、ときどき歩いたり足首を動かしたりすることで、ふくらはぎの筋肉が働き、足の血液が心臓へ戻りやすくなります。

また、静脈の働きが関係するむくみでは、足を少し高くして休むと軽くなることがあります。

ただし、横になると息苦しい場合や、心不全が悪化している場合は、無理に足を上げて休まず、医療機関に相談してください。

なお、急に片脚が腫れた場合は、運動やマッサージなどで対処しようとせず、先に医療機関で原因を確認してください。

着圧ストッキングは誰でも使ってよい?

着圧ストッキングは、静脈の働きが原因のむくみなどに役立つ場合があります。

ただし、誰でも自己判断で使用してよいわけではありません。

特に注意したいのが、足の動脈の血流が悪い場合です。

動脈の血流が悪い人では、強い圧迫によって血流障害を悪化させる危険があります。

末梢動脈疾患を指摘されている方や、歩くとふくらはぎが痛くなる、足先が冷たいといった症状がある方は、自己判断で強い着圧を行わず、医療機関に相談してください。

動脈の血流障害が疑われる場合には、ABI(足関節上腕血圧比)という検査などで血流を確認することがあります。

また、心不全が悪化している場合も、圧迫療法の適否を個別に判断する必要があります。

むくみの原因によって適切な対処は異なるため、原因が分からないまま強い圧迫を続けないことが大切です。

むくみについてよくある質問

Q. 足がむくんだら水分を減らした方がいい?

必ずしもそうではありません。

むくみの原因が静脈の問題や薬の影響であれば、水分摂取を減らしても根本的な解決にはならない場合があります。

心不全や進行した腎疾患などでは水分摂取の調整が必要になることもありますが、病状に応じた判断が必要です。

むくみがあるという理由だけで、自己判断で極端な水分制限を行わないでください。

▶︎ 水はどれくらい飲めばいい?腎臓専門医が解説する飲水量の考え方

Q. 朝はむくまないのに、夕方だけ足がむくむのは病気?

長時間の立位や座位によって、夕方に足がむくみやすくなることがあります。

一方、慢性静脈不全などでも同じような変化が見られます。

繰り返す場合や、皮膚の色の変化、痛み、むくみの悪化などがある場合は、医療機関で相談してください。

Q. むくみがなければ腎臓は大丈夫?

いいえ。

慢性腎臓病では、自覚症状がほとんどないまま進行することもあります。

むくみがなくても、健診で尿蛋白やeGFRの異常を指摘された場合は、必要な再検査や受診を行うことが重要です。

▶︎ 健診で腎臓が悪いと言われたら、まず何をすべき?

まとめ:むくみは「原因」と「変化」を合わせて考える

  • むくみとは、細胞と細胞の間に余分な水分がたまった状態です。
  • 静脈の働きや薬の影響でも起こり、腎臓病だけが原因ではありません。
  • 片脚か両脚か、急に出たか、ほかの症状があるかが重要です。
  • 短期間の体重増加は水分貯留の手がかりになりますが、それだけで原因は判断できません。
  • 急な片脚の腫れや、呼吸困難・胸痛を伴う場合は早急な評価が必要です。

むくみがあると、腎臓や心臓の病気を心配するかもしれません。

しかし、重要なのは、むくみだけで病名を推測することではなく、普段と何が変わったのかを確認することです。

気になる変化が続く場合は、体重や症状の記録を持って医療機関に相談してください。

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参考文献

  1. Patel H, Skok CJ, DeMarco A.
    Peripheral Edema: Evaluation and Management in Primary Care.
    Am Fam Physician. 2022;106(5):557-564

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や検査結果に応じた対応は医療機関でご相談ください。

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