運動強度とは?|腎臓・生活習慣病があっても安全に続けるための考え方
この記事は、腎臓病や生活習慣病がある方で「安全に運動したい方」に向けた内容です。
肥満、高血圧、糖尿病、腎臓病、心血管疾患。いずれにおいても「運動が重要」と言われています。
しかし実際には、
- どのくらいの強さでやればいいのか
- やりすぎて悪化しないか
と迷ってしまい、結果的に「やりすぎる」「何もしない」に分かれてしまうケースが少なくありません。
結論:多くの人は「少しきつい(RPE:5〜6/0〜10段階)」を目安にすれば安全に運動できます。
運動の効果については、▶︎ 運動の効果とは?(準備中)で解説しています。
この記事では、「運動強度とは何か」「どうやって決めるか」を、医師の視点から実用的に整理します。
運動強度とは「どれくらいキツいか」
運動強度とは、体にどれくらい負荷がかかっているか(どれくらいキツいか)を示す指標です。
同じ「ウォーキング」でも、ゆっくり歩くのと早歩きでは体への負荷は大きく異なります。
重要なのは、運動の種類だけではなく強度です。
研究で使われる強度指標(現実的には使いにくい)
研究では、以下のような客観的な指標が使われます。
| 指標 | 中強度 | 高強度 |
|---|---|---|
| 心拍数 | 最大心拍数の60〜70% | 最大心拍数の80〜90% |
| 酸素摂取量(VO2) | VO2peakの40〜60% | VO2peakの60%以上 |
| 筋トレ(負荷) | 1RMの60〜80% | 1RMの80%以上 |
しかし、これらは
- 測定が難しい
- 個人差が大きい
- 日常生活では使えない
という問題があります。
そのため実際の臨床では、Borg scale(6〜20の15段階)や修正Borg scale(0〜10の11段階)が用いられます。
実際に使うのは「主観的強度(RPE:Rating of Perceived Exertion)」
Borg scaleは15段階に、修正Borg scaleは11段階でそれぞれ「どれくらいきついか」を表したものです。
心拍数との相関などからBorg scaleの方が医学的な研究では一般的に使われますが、より簡便な指標として修正Borg scaleも有用です。

| 強度 | 修正Borg scale(0〜10の11段階) | 感覚 |
|---|---|---|
| 低強度 | 3〜4 | 楽に続けられる |
| 中強度 | 5〜6 | ややきつい(余裕はある) |
| 高強度 | 7〜8 | かなりきつい |
多くの人は「中強度(5〜6)」を目安にするのが基本です。
感覚の目安(補助的な理解)
RPEの感覚がつかみにくい場合は、運動生理学の分野で研究されている会話テスト(Talk test)が参考になります。
以下のようにイメージすると分かりやすくなります。
| RPE | 体感の目安 |
|---|---|
| 3〜4 | 余裕で会話できる |
| 5〜6 | 短い会話はできるが少し息が上がる |
| 7以上 | 会話が難しい |
※これはあくまで補助的な目安であり、基本はRPEで判断します。
具体例で理解する運動強度
| 運動内容 | 強度の目安 |
|---|---|
| ゆっくり散歩 | RPE3〜4(低強度) |
| 早歩き | RPE5〜6(中強度) |
| 坂道や速いジョギング | RPE7以上(高強度) |
| 軽いスクワット | RPE4〜5 |
| しっかり負荷をかけた筋トレ | RPE6〜8 |
上記はあくまで一例です。
心不全や呼吸器疾患があったり、そもそもの体力や筋力がない場合は運動内容と一般的な強度が乖離します。そのためにも主観的な強度を目安に、ご自身にあった運動内容とするのが望ましいです。
なぜ「やりすぎ」が問題になるのか
運動は基本的に有益ですが、強度が高すぎると以下のリスクがあります。
| 臓器 | 内容 |
|---|---|
| 心臓 | 心筋の線維化、不整脈リスク増大 |
| 腎臓 | 横紋筋融解症や脱水などによる腎不全 |
| 骨・軟部組織 | 関節や筋肉の損傷 |
特に「毎回限界まで行う」「週5回以上高強度を続ける」といった習慣はリスクになります。
詳細は ▶︎ 運動のやりすぎリスク を参照してください。
結局どのくらいやればいいのか
一般的な目安は以下です。
- 中強度の有酸素運動:週150分
- 筋トレ:週2〜3回
ただし、これはあくまで基準です。
腎機能やリスクに応じた考え方は
▶︎ 腎機能とリスクで考える運動 を参照してください。
最も重要なポイント
「少し余裕があるところでやめる」ことです。
特に運動に慣れていない方は、
- 思っているより強度が高い
- 無理をしやすい
傾向があります。
そのため、「まだできる」と感じるくらいで止めることが、安全に続けるために重要です。
筆者の外来でも、3〜6ヶ月程度続けると、効果を実感される方が多いです。
まとめ
- 運動強度は「どれくらいキツいか」で決まる
- 実際にはRPE(主観的強度)で考える
- 多くの人はRPE5〜6(余裕はあるが、少しきつい)が目安
- やりすぎは腎臓・心臓などにもリスクがある
- 継続できる強度が最も重要
特別な器具は必要ありません。
まずは「少し息が上がる散歩」を10〜15分、週2〜3回から始めてください。
その他腎臓と運動に関する記事は下記でまとめています。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代替ではありません。詳細は主治医にご相談ください。
参考文献
- KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease
- Kohzuki, M. Renal Rehabilitation: Present and Future Perspectives. J. Clin. Med. 2024
- Hallan, S. I., et al. Long-Term Physical Exercise for Preventing CKD in Older Adults. JASN 2025 (Generation 100 Study)
- Traise, A., et al. The effect of exercise training on quality of life in people with CKD requiring dialysis. J. Nephrol. 2025
- ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription (11th Edition)

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