「尿アルブミン」という検査を見たことはあるでしょうか。
糖尿病の診療ではよく使われますが、
健康診断の尿タンパクとは何が違うのか分かりにくい検査でもあります。
結論から言うと、
尿アルブミンは、尿タンパクよりも早い段階の腎障害を捉えやすい検査です。
特に糖尿病では、腎機能が保たれている段階からアルブミン尿が増えることがあり、
腎障害の早期発見やリスク評価に使われます。
一方で、尿アルブミンだけですべての腎疾患が分かるわけではありません。
日本では保険診療上の測定対象に制限があり、
Bence Jones proteinのようなアルブミンではないタンパクを十分に捉えられない場合もあります。
尿アルブミンとは?
アルブミンは、血液中に多く存在するタンパク質です。
通常は腎臓の糸球体でほとんど尿中に漏れないように保たれています。
ところが糸球体の障害が進むと、
少量ずつアルブミンが尿中に漏れるようになります。
この尿中のアルブミンを測定したものが
尿アルブミンです。
KDIGO 2024では、
CKDの評価においてeGFRだけでなく
アルブミン尿を組み合わせて評価すること
が重視されています。
アルブミン尿は、多くのCKDで尿中に失われる主要なタンパクであり、
早期腎障害の検出や予後評価に有用です。
尿タンパクと尿アルブミンは何が違う?

尿タンパクと尿アルブミンは似ていますが、
同じ検査ではありません。
| 尿タンパク | 尿アルブミン | |
|---|---|---|
| 何を測る? | 尿中のさまざまなタンパク | アルブミンに特化 |
| 早期腎障害 | 少量では捉えにくいことがある | 少量の変化を捉えやすい |
| 主な使い方 | 一般的なタンパク尿評価 | 糖尿病などの早期腎障害評価 |
| アルブミンではないタンパク | 拾える場合がある | 十分に拾えない |
通常の尿試験紙は、少量のアルブミン尿では陰性になることがあります。
そのため、
尿タンパクが陰性だからといって、尿アルブミンも正常とは限りません。
なぜ糖尿病では尿アルブミンを測るの?
糖尿病では、
血糖異常などの影響によって糸球体に負担がかかり、
腎機能が低下するより前に
尿中アルブミンが増えることがあります。
そのため、糖尿病では
eGFRがまだ保たれている段階から尿アルブミンを測定する
ことが重要です。
KDIGO 2024でも、
アルブミン尿はeGFRと並んでCKDのリスク評価に用いられています。
同じeGFRでも、尿アルブミンが多いほど
腎機能低下や心血管イベントのリスクが高くなる傾向があります。
つまり、糖尿病で尿アルブミンを測る理由は、
「腎機能が悪くなってから見つける」のではなく、
より早い段階から腎障害のサインを捉えるため
です。
ACR・UACRとは?
尿アルブミンは、
単純に尿中の濃度だけで評価すると
水分摂取量や尿の濃さに影響されます。
そこで使われるのが、
ACR(Albumin-to-Creatinine Ratio)です。
UACR(Urine Albumin-to-Creatinine Ratio)とも呼ばれます。
尿中アルブミンを尿中クレアチニンで割ることで、
尿が濃い・薄いという影響をある程度補正します。
KDIGO 2024では、
初回評価として随時尿や早朝尿のACRを用いる方法が推奨されており、
特に早朝尿は日内変動が少ないため適しています。
尿アルブミンの基準値は?A1・A2・A3とは
KDIGOでは、
尿アルブミンを大きく3段階に分類します。
| 区分 | ACR | 意味 |
|---|---|---|
| A1 | <30 mg/gCr | 正常〜軽度増加 |
| A2 | 30〜299 mg/gCr | 中等度増加 |
| A3 | 300 mg/gCr以上 | 高度増加 |
以前は、
A2を「微量アルブミン尿」、
A3を「顕性アルブミン尿」と呼ぶことが多くありました。
現在はKDIGOでは、
A1・A2・A3というアルブミン尿区分
で表現するのが基本です。
尿アルブミンが高かったらどうする?
尿アルブミンが高かった場合でも、
1回の測定だけでCKDと判断するわけではありません。
尿アルブミンは、
運動、感染、血糖状態、血圧などによって変動することがあります。
KDIGO 2024でも、異常値は必要に応じて再確認することが推奨されています。
| 確認するもの | なぜ見る? |
|---|---|
| 再検査のACR | 持続しているか確認する |
| eGFR・クレアチニン | 腎機能低下の有無を確認する |
| 尿タンパク | タンパク尿の程度や他の腎疾患を評価する |
| 血圧 | 腎障害の進行リスクと関連する |
| HbA1c・血糖 | 糖尿病管理状況を確認する |
特に糖尿病があり、
アルブミン尿が持続する場合には、
血糖、血圧、腎機能などを合わせて管理していきます。
尿アルブミンが正常なら腎臓は大丈夫?
そうとは限りません。
CKDには、
アルブミン尿が目立たないままeGFRが低下するタイプ
もあります。
そのため、
尿アルブミンが正常でも、
eGFRが低下している場合や
クレアチニンが上昇している場合には、
腎機能の評価が必要です。
CKDの評価では、
「eGFR」と「アルブミン尿」の両方を見る
ことが重要です。
尿アルブミン検査にも限界がある
尿アルブミンは非常に有用な検査ですが、
万能ではありません。
日本では保険診療上の測定に制限がある
KDIGOではCKD全般でアルブミン尿評価が重視されていますが、
日本の保険診療では尿中アルブミン定量の算定対象に制限があります。
現行の診療報酬では、
糖尿病または糖尿病性早期腎症で微量アルブミン尿を疑う患者
に対して、
原則3か月に1回まで算定できる扱いです。
そのため、
非糖尿病CKDでは
KDIGOで推奨されるように自由にACRを測定できるとは限りません。
日本では尿タンパクや尿タンパク/クレアチニン比などを用いて評価する場面も多くあります。
Bence Jones proteinなどは拾いにくい
尿アルブミンは、
アルブミンに特化した検査です。
そのため、
多発性骨髄腫などでみられる
Bence Jones protein(免疫グロブリン軽鎖)など、
アルブミンではないタンパクが主体のタンパク尿は十分に評価できない
ことがあります。
つまり、
「尿アルブミンが正常=すべてのタンパク尿が否定できる」わけではありません。
尿タンパクと尿アルブミン、結局どちらを見ればいい?
どちらか一方が優れているというより、
目的によって使い分ける
と考えると分かりやすいです。
| 知りたいこと | 向いている検査 |
|---|---|
| 一般的なタンパク尿の有無 | 尿タンパク |
| 糖尿病で早期腎障害を確認 | 尿アルブミン(ACR) |
| CKDリスクを詳しく評価 | eGFR+ACR |
| アルブミンではないタンパクを疑う | 尿タンパク・タンパク分画など追加評価 |
まとめ|尿アルブミンは「早期の腎障害」をみる重要な検査
尿アルブミンは、
尿蛋白よりも少量のアルブミン排泄を捉えやすく、
特に糖尿病での早期腎障害評価に重要です。
一方、
尿アルブミンだけで腎臓の状態すべてが分かるわけではありません。
ACRだけでなく、
eGFR、クレアチニン、尿タンパク、血圧、血糖などを組み合わせて
評価することが重要です。
健診で腎機能異常や尿タンパクを指摘された場合には、
一つの数値だけを見るのではなく、
複数の検査を組み合わせて「次に何をするか」を考える
ことが大切です。
健診結果をどう見ればいいか迷った方へ
eGFR、クレアチニン、尿タンパク、尿アルブミン。
腎臓の検査は項目が多く、
「結局どれを見ればいいのか分からない」と感じる方も少なくありません。
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著者:Dr.crescent|腎臓・透析専門医
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参考文献
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO).
KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. - 厚生労働省.
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項.
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、
個別の診断・治療の代替ではありません。
検査結果や症状については医療機関でご相談ください。

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