【専門医が解説】腎臓を守ろう〜腎臓に良い運動とは?〜

【専門医が解説】腎臓を守ろう〜腎臓に良い運動とは?〜 腎臓×健康×運動

はじめに

健診で「腎機能がちょっと低い」と言われた方に多い誤解のひとつが、「塩分やたんぱく制限さえ守れば大丈夫」という考えです。ところが、実際には運動習慣の有無も腎臓の健康に影響します。

これまで「【専門医が解説】腎臓を守ろう〜腎臓病とは〜」と「 【専門医が解説】腎臓を守ろう〜腎臓に良い食事とは?〜 」において、腎臓病について概説してきました。

本稿では、腎臓専門医の視点から、CKD(慢性腎臓病)に関連する運動エビデンスと、日常で取り入れやすい具体的な運動メニューを紹介します。

どんな研究があるのか

下記に研究方法の中でも信頼性の高い“メタ解析“や“ランダム化比較試験“と言われる手法を使われた研究をお示しします。

  • 定期的な有酸素運動はeGFRなど腎機能指標に良い影響を与える研究が複数ある(ただし効果は運動の種類・強度・継続期間に依存)。
  • レジスタンス(筋力)トレーニングは、炎症マーカー改善や身体機能向上に有効で、高齢者のフレイル予防に貢献する。
  • HIIT(高強度インターバルトレーニング)は心肺や代謝に強い効果を示すが、CKD患者に安全に適用するためには段階的アプローチが必要。
  • 「ただ歩けば良い」わけではなく、週合計の時間や強度(中等度以上の負荷)が重要という報告もある。

KDIGO(ガイドライン)からの推奨ポイント

KDIGO 2024は、CKD患者に対して心血管の健康、耐久性、フレイル対応に合う身体活動を勧めています。要点を整理します:

  • 成人CKD の目安:中強度の身体活動を累積で週150分以上(例:速歩30分 × 週5日)を目標にすることを助言する(Grade 1D)。
  • 「中強度」とは:会話はできるが歌うのは難しいレベル(息が弾むが会話は維持できる程度)。
  • 個別化が重要:心機能、年齢、運動経験、合併症(貧血・心疾患等)に応じて強度や種目を調整する。

実践:安全に始める運動処方と注意点

1) 安全チェック(始める前に)

以下のような場合は運動は行わず、主治医に相談しましょう。

  • 安静にしていても胸の痛みや強い息苦しさがある

  • 軽く動いただけで脈が乱れる/ふらつく

  • 発熱・倦怠感・食欲不振など「いつもと違う」体調不良がある

  • 血圧が普段よりかなり高く、頭痛やめまいを伴う

  • 透析直後にふらつきや立ちくらみが強く出る

  • 最近、「運動や入浴は控えてください」と言われた(例:心不全・感染症・腎炎の疑いなど)

  • ご自身では判断が難しい病状(貧血・感染症など)も、体調変化として現れます。
    「なんとなくおかしい」「今日は体が重い」と感じる日は、運動を控える勇気も大切です。

2) 運動プログラムの例(初心者〜中級者向け)

以下は「週150分」の目安に沿った一例です。無理のない範囲で段階的に増やしましょう。

  • 有酸素(心肺):速歩 30分 × 5日
  • レジスタンス(筋力):自重スクワット 2セット×10〜15回、椅子からの立ち上がり、壁プッシュアップ 2セット×8〜12回 を週2回
  • 柔軟・体幹:ストレッチやプランクを短時間でも毎日
  • HIIT(導入は慎重に):短時間(合計10〜20分)で行い、まずは低負荷インターバルから

3) 強度と経過の見方

運動中・後のチェックポイント:

  • 該当部位の筋肉がじわっと温まる感じがありながら、会話はできる程度の負荷が望ましいでしょう
  • めまい、胸痛、強い息切れがあれば中止して医師へ相談
  • 数週間単位で体調・疲労・血圧を評価し、問題がなければ強度を徐々に上げる
  • 透析患者は体重増減・血圧で液体管理の影響を見ながら実施

4) 日常に取り入れるコツ

  1. 移動を速歩に変える(エレベーター→階段、近距離移動は徒歩)
  2. テレビを見ながらレジスタンス(立ち座り、ミニバンド)を行う
  3. 家族と一緒に散歩や公園で遊ぶ時間を作る

まとめ:運動は腎臓を守る「生活処方」

有酸素運動、筋力トレーニング、場合によってはHIITまで、運動の種類は幅広く腎臓に良い効果が期待できます。重要なのは「個別化」と「継続」です。まずは週合計150分の中強度運動を目安に、体調と主治医の判断に合わせて段階的に進めてください。運動は薬と同じく“処方(強度・頻度・時間)”が鍵になります。

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出典

  1. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S): S117–S314.
  2. Johansen KL, Painter P. Exercise in Individuals with CKD. Am J Kidney Dis. 2012;59(1):126–134.
  3. Zhang L, Wang Y, Xiong L, et al. Exercise therapy improves eGFR… BMC Nephrol. 2019;20:398.
  4. Ma Q, Gao Y, Lu J, et al. The effect of regular aerobic exercise on renal function in patients with CKD. Front Physiol. 2022;13:901164.
  5. Traise A, Dieberg G, Degotardi E, et al. The effect of exercise training on quality of life in people with chronic kidney disease requiring dialysis. J Nephrol. 2025;38:893–911.
  6. Hallan SI, Øvrehus MA, Shlipak MG, et al. Long-Term Physical Exercise for Preventing CKD in Older Adults: A RCT. J Am Soc Nephrol. 2025;36:1352-1362.

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