【専門医が解説】CKD(慢性腎臓病)のタンパク質制限はいつから必要?何g?誤解だらけの食事療法を整理する

【腎臓専門医が解説】CKDのタンパク質制限はいつから必要?何g?誤解だらけの食事療法を整理する 腎臓×食事

【専門医が解説】CKD(慢性腎臓病)のタンパク質制限はいつから必要?何g?誤解だらけの食事療法を整理する

「腎臓が悪いと言われたら、すぐにタンパク質を減らさなければいけないのでしょうか?」
「お肉や魚はどのくらい食べていいのでしょうか?」

このような疑問や不安をお持ちの方は非常に多いです。しかし実際には、タンパク質制限はすべての人に一律に必要なものではありません。また、「いつから」「どの程度」制限するかは、腎臓の状態や年齢、体格、栄養状態によって大きく異なります。

この記事では、腎臓専門医の立場から、CKDにおけるタンパク質制限の考え方を、最新のガイドラインに基づいて、できるだけわかりやすく整理して解説いたします。

慢性腎臓病(CKD)や尿蛋白などについてまず知りたい方は ➡️腎臓病の基礎知識


1. なぜタンパク質制限が必要になるのか?(メカニズム)

腎臓の機能が低下すると、タンパク質の代謝産物である尿素窒素などの老廃物が体内に蓄積しやすくなり、さまざまな症状の原因となります。

さらに、タンパク質を多く摂取すると、腎臓の糸球体における「過剰濾過」という状態が生じ、糸球体内の圧力が上昇します。

この状態が長期間続くと、糸球体が徐々に硬くなり(糸球体硬化)、腎機能の低下がさらに加速するという悪循環に陥ります。

タンパク質制限は、この糸球体内圧を下げ、腎機能の低下スピードを緩やかにする(腎機能を「保存」する)ことを目的として行われます


2. 健康な人にもタンパク質制限は必要なのでしょうか?

● 健康な成人の場合

健康な方において、高タンパク食がただちに腎機能を悪化させるという明確な証拠は、現時点ではありません。

● ただし「リスクがある人」は注意が必要です

一方で、肥満・糖尿病・高血圧などのリスク因子をお持ちの方では、高タンパク食が腎機能低下のスピードと関連する可能性が、複数の大規模研究で示唆されています。

特に、すでに「過剰濾過」の状態にある方では、高タンパク摂取が腎臓にとって負担になりやすいと考えられています。


3. 「いつから」「どれくらい」制限するべきか?(具体的な数値)

最新の国内外のガイドラインをもとにすると、おおまかな目安は以下のように整理できます。

CKDステージ別:タンパク質摂取量の目安

CKDステージ 腎機能の状態 推奨されるタンパク質摂取量 補足
G1〜G2 腎機能は保たれているが尿蛋白などの異常あり 0.8〜1.0 g/kg/日
(少なくとも1.3 g/kg/日以上は避ける)
尿蛋白が多い場合やリスクが高い場合はやや控えめに
G3a 軽度〜中等度低下 0.8〜1.0 g/kg/日 過剰摂取を避けることが重要
G3b〜G5
(透析前)
高度低下 0.6〜0.8 g/kg/日 進行抑制目的。専門医・管理栄養士の指導が望ましい
高度進行例
(一部)
ごく進行した症例 0.3〜0.4 g/kg/日 厳格な医学管理下のみ。一般的には推奨されない

● よくある誤解:「肉100g=タンパク質100g」ではありません

多くの方が誤解されていますが、肉や魚100gに含まれるタンパク質は約20〜25g程度です。

「食材の重さの約1/4がタンパク質」と考えると、イメージしやすいと思います。


4. タンパク質制限とセットで考えるべき「エネルギー」と「塩分」

● 十分なエネルギー摂取

タンパク質だけを減らして、エネルギーが不足すると、体は自分の筋肉を分解してエネルギーを作ろうとします(異化)。

これは栄養状態を悪化させるだけでなく、かえって腎臓に負担をかける結果になってしまいます。

目安として、25〜35kcal/kg/日のエネルギーを、主に糖質や脂質からしっかり確保することが重要です。

● 塩分制限(減塩)

基本は1日6g未満です。減塩をしっかり行うことで、血圧が下がるだけでなく、RAAS阻害薬などの腎保護薬の効果も最大限に引き出すことができます。


5. タンパク質の「量」だけでなく「質」も重要です

近年は、タンパク質の量だけでなく、「どのような種類のタンパク質を摂るか」も注目されています。

  • 赤身肉や加工肉の過剰摂取:CKDの発症・進行リスクを高める可能性
  • 魚介類・大豆製品・植物性タンパク質中心の食事:腎臓にやさしく、保護的に働く可能性

6. タンパク質制限を「してはいけない」または「慎重にすべき」人

● フレイル・サルコペニアの方

高齢者などで筋肉量が減少している場合、過度な制限はかえって生命予後を悪化させる可能性があります。

このような場合は、腎機能よりも栄養状態の維持を優先し、0.8〜1.3g/kg/日程度まで制限を緩和することもあります。

サルコペニアを疑う目安となる「握力」の基準

年齢 男性 女性
50〜64歳 34kg 未満 20kg 未満
65歳以上 28kg 未満 18kg 未満

これらの基準を下回る場合は、すでに筋力低下(サルコペニア・フレイル)が疑われる状態であり、腎機能だけを優先した過度なタンパク質制限は、かえって生命予後やADLを悪化させる可能性があります。

このような場合は、栄養状態と筋肉量の維持を優先し、0.8〜1.3 g/kg/日程度まで制限を緩和する判断がなされることも少なくありません。

● 小児(成長期の子ども)

成長障害のリスクがあるため、原則としてタンパク質制限は行いません。

● 急性腎障害(AKI)

一時的な病態であり、回復のために十分な栄養が必要となる場合が多く、慢性腎臓病とは考え方が異なります。


7. 【実践編】「制限」ではなく「目標量を意識する」という考え方

ここまで解説してきた通り、タンパク質は「ただ減らせば良い」というものではなく、その人にとって適切な量を設定することが最も重要です。

私自身は、厳密なタンパク質制限をしているわけではありませんが、体重と活動量をもとに「おおよその目標摂取量」を決めて食事管理を行っています

その具体的な考え方と実際の食事内容については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考になれば幸いです。

▶ 腎臓専門医が行なっている食事におけるタンパク質の考え方

「制限」という言葉に振り回されず、ご自身の体の状態に合った「現実的に続けられる管理」を目指すことが、長期的に腎臓を守る最も大切なポイントです。

8.参考文献

  1. Devries MC, et al. J Nutr. 2018.
  2. Talebi S, et al. BMC Nutr. 2025.
  3. Jhee JH, et al. Nephrol Dial Transplant. 2020.
  4. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group.
    Kidney Int. 2024.
  5. Japanese Society of Nephrology (JSN).
    CKD Practice Guide. 2024.
  6. Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW).
    Dietary Reference Intakes for Japanese (2025 Edition). 2025.
  7. Yoshida Y, et al. J Jpn Assoc Dial Physicians. 2020.

9.食事に関してさらに知りたい方はこちら

・腎臓×食事に関する記事のまとめは ➡️「【専門医監修】腎臓を守る食事ガイド|専門医が整理する基本と実践

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