腎臓・透析専門医であり、日々の食事や運動習慣について自らもトライアンドエラーを繰り返している筆者が、
「腎機能を守りながら、長く動ける身体を作るための運動」について、科学的根拠と臨床経験の両面から解説します。
運動を考える前に:
腎臓の状態やリスク分類を正しく理解していないと、対策の優先順位を間違えることがあります。
そこでこのページでは、CKDが気になる方や健診異常を指摘された方が、今日から安全に始められる運動の考え方と進め方を、段階別に整理しています。
まず知っておきたい:腎臓と運動の関係
腎臓病は自覚症状が乏しく、症状が出る頃には透析や腎移植といった腎代替療法が視野に入る段階、ということも珍しくありません。
腎臓病とは、腎臓の濾過機能が低下したり、尿に蛋白や血液が漏れたり、腎臓の形態に異常が出たりする状態を指します。
この状態は、腎不全に進行するリスクだけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクも大きく上昇することが知られています。
そう聞くと「安静にしていた方がいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。実際、昔は腎臓病に対して安静が勧められていた時代もありました。
しかし現在では、腎臓病があっても適切な運動はむしろ推奨されるというのが国際的なコンセンサスです。
ただし、過度な追い込みや脱水を伴う運動は逆効果になります。
まずは「なぜ運動が必要なのか」「どんな運動が推奨されているのか」という全体像から押さえていきましょう。
運動は腎臓や心血管系を守る重要な習慣ですが、強度や量を誤ると、心血管イベント・死亡リスクの上昇や、急性腎障害(場合によっては透析が必要な状態)につながることもあります。
「どこからがやりすぎなのか?」「どの程度が安全域なのか?」については、以下の記事で医学的に整理しています。▶︎ 運動はやりすぎると危険?|死亡・心血管イベント・腎障害のリスクから考える「安全な運動量」の目安
STEP1|まずここから考える:ウォーキングだけで十分?
「とりあえず毎日歩いています」
これは、腎臓を守るうえでとても良いスタートです。
実際、有酸素運動には死亡率低下や透析導入リスク低減といった確かなエビデンスがあります。
一方で、40〜50代以降になると
「歩いているのに体力が落ちてきた」
「階段がしんどい」
と感じる人が増えてくるのも事実です。
ウォーキングは本当にそれだけで十分なのか?
何を、どの程度足すと良いのか?
筋力・筋量・血圧・血糖といった観点から、
有酸素運動単独と、筋トレ併用の違いを
研究データと臨床経験をもとに解説した記事がこちらです。
この「次の一手」を理解しておくと、
その後のジム通いや筋トレの意味づけが、ぐっと明確になります。
STEP2|実践編①:初心者でも安心な筋トレ
「少しお腹も出てきたし、健診の異常も増えてきた。そろそろジムに行ってみよう」そんな方が最初につまずくのが、「何から始めればいいのかわからない」という問題です。
筆者は、まずは安全性が高く、動作も安定しやすいマシントレーニングから始めることを勧めています。通うジムの選び方や、最初に取り組むべき種目についても整理しています。
STEP3|実践編②:Big3を安全に続ける
マシントレーニングに慣れてくると、「重量もあまり伸びないし、体もあまり変わらない」と感じる時期が来ます。
そこで選択肢になるのが、スクワット・ベンチプレス・デッドリフトといった、いわゆるBig3です。
これらは全身を効率よく鍛えられる非常に優れた種目ですが、腎臓を守る観点では「過度な負荷を避ける」「追い込まない」設計が不可欠です。
筋トレ前後のケアや、関節のメンテナンスも含めて考えることで、長く続けられる運動になります。
注意領域|HIITは誰にでも勧められるわけではない
中強度の有酸素運動が推奨される一方で、「より高強度の運動の方が腎機能低下を抑制した」という研究も存在します。
ただし、これらの研究は医療者のモニタリング下で慎重に行われていることが前提です。
HIITは効果が高い反面、腎機能や持病によっては明確にハイリスクになります。万人に勧められる運動ではありません。
新しいガイドラインや研究結果が出次第、内容をアップデートしていきます。


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