ウォーキングだけで腎臓は守れる?専門医が解説する「次に足すべき運動」

ウォーキングだけで、本当に足りていますか? 腎臓×運動

「とりあえず歩いています」。外来で最もよく聞く言葉のひとつです。
結論から言えば、ウォーキングは腎臓と寿命を守る、非常に優れた運動です。
しかし一方で、「歩いているのに階段がきつくなってきた」「体力の衰えを感じる」という声も少なくありません。

この「実感のギャップ」の背景には、加齢と腎臓病に伴う“筋肉の減少”という医学的な現実があります。
この記事では、まず「歩くこと」の確かな価値を確認した上で、なぜそこに“筋トレ”を足した方がいいのかを、エビデンスベースで整理します。


有酸素運動(ウォーキング)の効果は本物です

まず大前提として、「とりあえず歩いている」は医学的にはっきりと正解です。

✔ 大規模研究でわかっていること

  • ウォーキング習慣のあるCKD患者は、全死亡リスクが約33%低下
  • 透析(腎代替療法)に進むリスクも約20%以上低下
  • 年齢・腎機能・糖尿病の有無に関係なく効果が認められる
  • 歩く頻度が多いほどリスクが下がる「用量反応関係」も確認されている

つまり、「何もしないより、歩いている」どころか、「歩くこと自体が強力な治療介入」と言っていいレベルです。


それでも筋トレを足した方がいい理由

「とりあえず歩いている」「有酸素運動は続けている」という状態は、何もしないよりははるかに良いのは間違いありません。
実際に、有酸素運動には死亡率や透析リスクを下げる効果があることが多くの研究で示されています。

ただし、そこに筋トレ(レジスタンス運動)を追加することで、身体の指標はさらに大きく改善することも分かってきています。
ここでは代表的な4つの指標について、「有酸素運動のみ」と「有酸素+筋トレ併用」を比較した研究結果を紹介します。

① 筋力の改善効果

筋力:有酸素運動と筋トレの比較
12週間の介入での膝進展筋力の変化。有酸素運動単独よりも、筋トレ併用群で筋力の伸びが約3倍大きいことが示されています。

ポイント: 筋トレを追加することで、筋力の改善幅は有酸素運動単独よりも大きくなります。

② 筋肉量の改善効果

筋量:有酸素運動と筋トレの比較

12週間の介入での大腿四頭筋の筋肉量の変化。併用群の方が筋肉量の増加が2倍近く大きいことが示されています。

ポイント: 筋トレを組み合わせることで、有酸素運動単独より飛躍的に筋量を増やすことができます。

③ 血圧の改善効果

血圧:有酸素運動と筋トレの比較

12週間の介入での収縮期血圧の変化。どちらも血圧は下がりますが、併用群の方が低下幅が大きい結果でした。

ポイント: 血圧も、有酸素運動に筋トレを組み合わせた方がより改善しやすいことが示されています。

④ 血糖(HbA1c)の改善効果

HbA1c:有酸素と筋トレの比較

1年間の介入でのHbA1cの変化。併用群の方が、より大きな改善を示しています。

ポイント: 筋肉は最大の「糖の処理工場」です。筋肉量を増やすことで、血糖コントロールも改善しやすくなります。

これらの結果から、有酸素運動は「土台」としてとても重要ですが、そこに筋トレを足すことで健康効果をさらに上積みできることが分かります。


中年以降の身体は「何もしないと確実に衰える」構造になっています

CKDのある方は、何もしなければ筋肉が減りやすい状態にあります。
これは多くのレビュー論文でも一貫して指摘されています。

筋肉が減る → 代謝が落ちる → 動くのがしんどくなる → さらに筋肉が減る。
この「負のスパイラル」を止めるために、レジスタンス運動(筋トレ)は不可欠です。

そのため、米国糖尿病学会(ADA)や米国スポーツ医学会(ACSM)などの主要ガイドラインは、 有酸素運動に加えて、週2〜3回の筋トレを標準的に推奨しています。


外来で実際に起きている変化

論文の世界だけでなく、実臨床でも、

  • 「運動を続けたら、糖尿病の薬を減らせた」
  • 「駅の階段を避けなくなった」
  • 「疲れにくくなった」

といった変化は、決して珍しくありません。

実際、運動習慣は歩行能力そのものを改善することも示されています。


まとめ:「歩く」は正解。でも「設計された運動」へ

  • ウォーキングは、腎臓と寿命を守る“強力な治療”
  • しかし、中年以降の筋肉減少は「歩くだけ」では止めきれない
  • 有酸素+筋トレの併用が、最も合理的でエビデンスのある戦略

「ただ歩く」から、「10年後を見据えて設計された運動」へ。
その設計図には、必ず「筋トレ」というピースが入ります。

▶ 腎臓に配慮した運動の全体像は、こちらの記事にまとめています:➡️ 腎臓を守る運動の全体像を見る


参考文献

  • Chen IR, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2014.
  • Watson EL, et al. Am J Physiol Renal Physiol. 2018.
  • Yavari A, et al. Biol Sport. 2012.
  • Correa HL, et al. Front Physiol. 2025.
  • Alemayehu A, et al. Ethiop J Health Sci. 2023.

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