腎臓にやさしい運動って?WHO・KDIGO・日本の最新ガイドラインから読み解く

腎臓にやさしい運動って?WHO・KDIGO・日本の最新ガイドラインから読み解く 健康×筋トレ

腎臓病の運動療法の重要性

腎臓病の治療といえば、薬や食事療法が中心と思われがちですが、近年「運動療法」の重要性も高まってきています。とはいえ、「どのくらい運動すればいいの?」「腎臓が悪いのに動いて大丈夫?」と不安に思う方も少なくありません。

以前は、慢性腎臓病(CKD)患者さんに対して「安静が望ましい」とされる時代がありました。特に、運動によって尿たんぱくが増加することを懸念し、運動を控えるよう助言されることも少なくありませんでした。

しかし、近年の研究やガイドラインの更新により、適切な運動は腎機能を悪化させるどころか、心血管リスクの軽減や筋力維持、生活の質(QOL)の向上につながることが明らかとなってきました。

たとえば、2013年の日本腎臓学会の『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン』では、運動療法について「血圧、尿蛋白、腎機能などを慎重にみながら運動量を調節する」と記載されており、一定の注意を払いつつも運動の重要性が認識され始めていました。

さらに、2020年に発行された『腎臓リハビリテーションガイドライン』では、保存期CKD患者に対しても運動療法の有用性が示され、適切な運動が推奨されています。

このように、CKD患者さんに対する運動の考え方は、「安静第一」から「適度な運動を取り入れる」方向へと変化しています。今後も、個々の患者さんの状態に応じた運動療法の導入が期待されます。

世界および国内の主要なガイドラインにおける運動指針

【1】WHO:健康な一般人向けの運動指針

  • 対象:全年齢の健康な人(基礎疾患のない人)
  • 内容:週150〜300分の中強度の有酸素運動(例:早歩き)、または75〜150分の高強度運動を推奨
  • 追加で:週2回以上の筋力トレーニングも推奨
  • 特徴:健康増進・病気予防のための基準。腎疾患の記載はなし

【2】日本腎臓学会・CKD2023ガイドライン

  • 対象:慢性腎臓病(CKD)ステージ1〜5(非透析)
  • 内容:運動に関する記載はわずかで、詳細な内容や指針は明確にされていない
  • 補足:リスク因子としての肥満・糖尿病・高血圧管理の中で生活習慣改善の一環として運動が挙げられる程度
  • 今後に期待される分野ともいえます

【3】KDIGO 2024:国際的な腎疾患治療ガイドライン

  • 対象:CKD全般(非透析・透析前)
  • 内容:
    • 「可能な範囲での身体活動を推奨」
    • 週150分の中強度運動を例示(歩行、軽いサイクリングなど)
    • 運動によるフレイル・サルコペニアの進行予防効果が期待されている
  • 特徴:個別性を重視しつつも、明確な数値目標が提示されている点が特徴です

【4】腎臓リハビリテーションガイドライン(日本腎臓リハビリ研究会)

  • 対象:CKD保存期〜透析期、腎移植後患者など幅広くカバー
  • 内容:
    • 安全な運動の開始方法・禁忌・中止基準を明記
    • フレイル・サルコペニア・QOL改善目的での運動推奨
    • 腎疾患に特化したリスク評価とモニタリングの重要性を強調
  • 特徴:医療者向けに最も詳細なガイドライン。患者指導の際のベースにもなる内容です

まとめ:どれを参考にすればいいの?

  • 健康な方:WHOの指針をまず目安に
  • CKDの方:KDIGOの基準(週150分)が実用的で具体的
  • 医療者や専門的支援を受けたい方:腎リハガイドラインの活用を

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