はじめに:水分の「飲みすぎ」「飲まなさすぎ」に注意
「たくさん水を飲めば腎機能が守られる」。そんな話を聞いたことはありませんか? 医師として食事と栄養管理を発信しているDr.Crescentです。
慢性腎臓病(CKD)や透析患者さんにとって、水分管理は命に関わる重要なポイントです。飲みすぎれば心不全のリスク、飲まなさすぎれば脱水のリスクが高まります。
この記事では、人生実験室として、CKD・透析患者向けの水分管理を「医師の視点」でやさしく整理しました。育児や仕事で忙しくても実践しやすいポイントをまとめています。
水分は「飲めば飲むほど良い」わけではない
観察研究では「飲水量が多いほど腎機能低下が抑えられる可能性」が示されていますが、根拠はまだ弱く、ランダム化比較試験では明確な効果が示されていません(Clark et al., 2018)。
特にCKDが進行すると、体の水分バランスを調整する機能が低下するため、「たくさん飲めばよい」は危険です。飲み物の選び方については、関連記事:コーヒーと腎臓でも解説しています。
医師として、患者さんに「1日2L飲む」といった画一的なアドバイスは推奨していません。状態に合わせた柔軟な管理が必要です。
夏場の「口渇感」の落とし穴
夏は喉が渇きやすいですが、その「渇き」が水分不足を正確に示しているとは限りません。次のような流れで起こります。
- 食事で塩分摂取が増える
- 血液中のナトリウム濃度が上がる
- 浸透圧の変化で「喉の渇き」を感じる
塩分の多い食事(例:ラーメン、コンビニ弁当)は過剰な口渇感を引き起こし、水分の飲みすぎにつながります。CKD患者にとっては塩分管理が特に重要です。
「喉の渇き」や「尿の色」は過信できない
一般向けには水分状態の指標として使われる喉の渇き・尿の色・尿量ですが、CKD進行期や透析患者では信頼できないケースが多いです。
- 利尿薬使用:尿量は増えても脱水の可能性あり
- 尿量調節障害(尿崩症・間質性腎炎など):尿の色が状態を反映しない
そのため、私は患者さんへ「尿の色より体重と血圧をチェック」するように指導しています。
水分管理で見るべき3つの指標
CKD・透析患者が水分管理で重視すべきは、次の3つです。
- 毎朝の体重測定:前日比0.5〜1.0kgの変化に注意
- 血圧測定:水分過多で上昇、脱水で低下
- 食事と飲水の記録:特に塩分量は口渇や心不全に大きく影響
実験メモ:体重・血圧を毎日記録してもらうだけで、夏場の心不全リスクが下がるケースが多々あります。
透析患者の体重増加:どこまで許容?
透析患者では、透析間の体重増加をドライウェイトの2〜3%以内に抑えるのが一般的な目安です(例:70kg → 1.4〜2.1kg)。
ただし、年齢・心機能・栄養状態などで最適値は変わるため、かかりつけ医と相談して調整してください。
夏に増える脱水症状:こんなサインに注意
以下の症状がある場合、水分や食事内容の調整、医師への相談を検討してください。
- 朝の立ちくらみ・ふらつき
- 朝の血圧が20mmHg以上低下
- 倦怠感・集中力低下
- 尿量の大幅な減少
高齢者は喉の渇きを感じにくい傾向があり、脱水が進んでも気づかないことがあります。SLE患者では日光暴露で疾患悪化の可能性があるため、帽子や日除けも大切です。
おわりに:賢い水分管理で安全な夏を
CKD・透析患者にとって、水分の「飲みすぎ」も「飲まなさすぎ」も危険です。パイロット試験では、1日1〜1.5Lの飲水増加は安全に実施できたとされています(Clark et al., 2013)。
この量を目安に、体重・血圧・食事内容を組み合わせて調整してみてください。
関連して、コーヒーと腎臓の健康もぜひ参考にしてください。
質問や気づきがあれば、コメント欄でぜひ教えてください。
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