はじめに:50代の「なんとなく安心」が危ない
「昔と同じ生活をしているのに、お腹が出てきた」「健診で中性脂肪(TG)や肝機能異常を指摘されたけど、症状はないし……」──そんな声を、50代の患者さんからよく聞きます。医師として、健康管理をサポートする中で感じるのは、「歩いているから大丈夫」という過信が、代謝低下の落とし穴になっているケースが多いこと。加齢による身体の変化を放置すると、深刻な問題に発展する可能性があります。この記事では、医師視点でサルコペニア肥満の原因と対策を解説し、人生実験室として実践的なヒントをお届けします。
中年期の身体変化:なぜ今、気にするべきか?
50代以降、体内では以下の変化がじわじわと進行します。これらは、疲れやすさや体型変化(特に腹囲増加)として現れます:
- 筋肉量の減少(特に下肢の速筋):加齢や運動不足が原因。
- 基礎代謝の低下:筋肉減少により、エネルギー消費が減る。
- インスリン抵抗性の増加:血糖コントロールが悪化。
- 内臓脂肪の蓄積:皮下脂肪より悪影響が大きい。
これに伴い、中性脂肪の上昇、肝機能異常、血糖値の微増、軽度の血圧上昇などの「自覚症状なしの健診異常」が発生。。
放置のリスク:サルコペニア肥満とは?
「加齢のせい」と放置すると、「サルコペニア肥満」に陥りやすいです。これは、筋肉量の低下(サルコペニア)と脂肪の過剰蓄積(肥満)が同時進行する状態。一見標準体重でも、体内で筋肉が減り脂肪が増える悪循環が起きています。
セルフチェック:体重が変わらないのに服がきつくなった? 階段が疲れる? これがサインかも。原因は運動不足、栄養不足(タンパク質欠乏)、無理なダイエット(炭水化物抜き)など。
進行すると、基礎代謝低下で太りやすくなり、インスリン抵抗性が強まって糖尿病リスクが増大。心血管疾患や慢性腎臓病(CKD)の発症率も上がります。HITT(高強度インターバルトレーニング)という負荷の高い運動を行えば、普通に運動するよりも腎機能を守ることができるという検査結果も出ています。詳細はこちらをご覧ください。厄介なのは、筋肉減少が進むと回復が難しくなる点──自覚しづらいまま「取り返しがつかない」ラインを越える可能性があります。
歩くだけでは不十分? 中年運動の落とし穴
「毎日歩いている」と言う患者さんも多いですが、20分未満や会話ペースの低強度では、脂肪燃焼や筋刺激が不十分。夏の暑さで中断しやすいのも問題です。基礎代謝低下の50代では、有酸素だけでは筋力維持が追いつきません。
打開策:食事と筋トレを中心とした生活再設計
代謝低下した中年期では、食事と運動の2本柱で介入を。私の食事管理実験から、以下のポイントをおすすめします:
食事の見直し
- 過剰カロリー是正:1日の摂取を基礎代謝量に合わせる(アプリで記録)。
- PFCバランス:タンパク質を体重1kgあたり1g~1.5g(魚、鶏肉、卵、納豆、豆腐)。脂質控えめ、糖質制限(耐糖能異常時)。朝に温かい汁物+タンパク質で代謝アップ。
- 工夫:間食は極力糖質と脂質のみで構成されているものは控える。空腹になるなら食事回数を増やす。口寂しいならゼロカロリーのグミやガムなども。
運動(筋トレ+有酸素)
- 自宅自重トレーニング:スクワットやプランクで下肢筋を刺激。週3回、10分から。
- ジムBig3:スクワット・ベンチプレス・デッドリフトで負荷をかけ、基礎代謝10%向上を目指す。
- 組み合わせ:運動後タンパク質摂取で効果倍増。
育児中の方は短時間筋トレを、投資家視点では「健康投資」として長期的に取り組むのがコツ。AIに相談してパーソナライズもおすすめです。筆者もウェイトトレーニングのメニューや日々のRPEなどを踏まえて個別に相談しつつ、毎日のメニューを決めています。RPEについてはこちら。
おわりに:今から始める「人生実験」で健康を守ろう
中年になるとなかなか20歳代のようにはいかなくなってきます。是非これを機に運動と食事を意識してみませんか?あなたの実体験や質問は、コメントでシェアしてください!
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